呻吟語 / 処世
呻吟語(処世)の名句を、現代語訳と実践の解説つきで。全2230句。このページは1〜200句目です。
呂坤(一五三六〜一六一八)が三十年かけて書きためた語録です。万暦二十一年(一五九三)刊。呻吟とは病の床で漏らす呻き声のことで、自序に「呻吟は病の声なり」とあります。自分の病を自分で記録した覚え書きだ、という構えの書名です。この書には、他の語録に無い特徴が三つあります。一つは、自分を名指しで責めること。「今の学を講じる者は道を明らかにするためではなく、ただ勝ちを争うためだ」「我らこそが世の教えの大きな虫だ」と、士大夫という自分の属する層を何度も俎上に載せます。二つは、儒者でありながら朱子学にも陽明学にも寄りかからないこと。程明道が仏と老を多く読んだから抜けていた、と平気で書き、王覇を誠偽で分けた宋儒の読み方を誤りだと正面から退けます。三つは、実務の細かさ。刑部の次官として条文を曲げさせなかった記録、任地で用いた六つの手順、宿駅と州県に出した告示、役所の柱に掲げた対句まで、実際に使った言葉がそのまま残っています。全十七篇は、内篇八(性命・存心・倫理・談道・修身・問學・應務・養生)と外篇九(天地・世運・聖賢・品藻・治道・人情・物理・廣喻・詞章)に分かれます。分量の中心は外篇の治道三百五十三則と廣喻百四十二則で、前者は統治の実務論、後者は身の回りの物から理を取り出す比喩集です。錠と鍵、振り子、秤、炭の火力、桟道の歩き方、餅屋の勘定、蠅の集まる場所。どれも実際に見たものから書かれており、二千年前の故事を引く語録とは肌合いが違います。通して読むと、繰り返し現れる主題が見えてきます。じわじわ進むものを恐れること、満ちたものを自分から減らすこと、揃っていないものを揃えないこと、そして、上に立つ者が最初に責められること。「天が民を生んだのは君のためではなく、天が君を立てたのは民のためだ」「民に恥が少ないのは上の徳を見る指標であり、それ以上を民に求める必要はない」。統治を論じながら、矛先はほとんど常に上を向いています。底本は維基文庫『呻吟語(呂坤)』の十七篇本。二千二百三十九則・十五万八千十七字です。師導ではこのうち二千二百三十則を章句に収めました。外したのは脱文や判読不能で文意の追えない七則と、底本そのものが同じ一句を二つの篇に重ねて収めている二箇所の後ろ側です。底本十五万八千字に対して九十九・六パーセントで、全文コーパスには外した分も含めた二千二百三十九段すべてが入っています。学派は言志四録・菜根譚・徒然草と同じ「処世」に置きました。

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