呻吟語 / 内篇・修身・我に一善有り、又た何ぞ妒まん
稱人之善,我有一善,又何妒焉?稱人之惡,我有一惡,又何毀焉?
新字:称人之善,我有一善,又何妬焉?称人之悪,我有一悪,又何毀焉?
書き下し
人の善を稱するは、我に一善有り。又た何ぞ妒まんや。人の惡を稱するは、我に一惡有り。又た何ぞ毀らんや。
現代語訳
人の善を称えれば、それで自分にも一つの善があることになります。どうして妬む必要があるでしょうか。人の悪を言い立てれば、それで自分にも一つの悪があることになります。どうしてけなす必要があるでしょうか。
解説
人を褒めることと、けなすことの損得を、実に単純な帳簿で示します。褒めればこちらに善が一つ加わり、けなせば悪が一つ加わる。だから妬んで褒めないのは、自分の分を捨てているのと同じです。道徳の説教ではなく勘定の話にしているところが面白く、損得で考える人にも通じる形になっています。短いながら、日々の会話に直に効く一段です。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
称賛嫉妬悪口損得善
関連する章句
-
『初学訓』巻之五一富みては、貧しき者を忘れず、貴くしては、賤しき者を侮るべからず。又、かりそめにも、人を譏るべからず。人を譏りおとすは、即ち悪を行ふなり。人の才あり善あらば、少しなりとも褒めあげそだつべし。嘲りていひ貶すべからず。人をそしり、人をいひおとすは、不仁なり。人の才行あるを妬むは、わが身を立てんとするなり、不義なり。鄙狭といふべし、いやしむべし。
-
『甲陽軍鑑』品第十二よき大将は軍の時悉く皆我ざいをもつて勝利を得給ひても、主の手抦とはなくして、近習·小姓·小殿原·若党·小人·中間衆迄も誉たて、皆あれらが働きをもつて合に勝たりト教育。故に如此の大時の上には大名小名点〓之若蠶小武辺おぼへの者多く出る本ニハ「さを以てや、動いて、いは得云者なり、然は慎之公宜ふは将将の為に絶てももは多若夢·中間小者は尊近合廿人衆·小人·中間衆に一きだ て入念を入給ひ、
-
『甲陽軍鑑』品第十四それより勝頼公つよくはたらかんとし給ひ、つよみを過しておくれを取り給ふ、勝頼公强過て国を破り給はんこと疑あるまじ、侍の軽薄にほめ奉るをよきと思し食すは、全体牛が尾の劒をねぶり、舌をきらして死するを知らず候に、ひとしければこそ、此本を四君子命期の巻とは名づくるなり仍て如件天正三年乙亥年六月吉日高坂弾正書之長坂長閑老跡部大炊助殿参
-
『甲陽軍鑑』品第十三大身衆の思ひつき申ことは先関東中の久しき家にて、其大将の幼少成には其家の覚有老ともに、則ち主の知行を分て下され守たてよと仰付らるゝに付ては、主も被官もいぎなく管領公の御為大切に存ずること日々に新なるべしなとゝ申す、是も一理は尤もなれば管領則政公大きに合点まします故、関東にて結城にたがや千葉に原はらに高木両さかゐなどとて、主より大きなる知行取の有は、此時代より始まる、其知行取る者ども扨て則政公は名大将にて管領始まりてなき御仕置きと誉め奉つるにより、則政公思し召すは面白き分別をして我に名を取ヲするとて、すがの·上原次第に何事も則政公し給ふ故、よの家老衆のいさめ少しも許容を加へ給はず候、
-
『大和俗訓』巻之五・言語一面前に人をほむるは、諂にちかし。もし誉むべきことあらば、其人に対せずして、他人に対して誉むべし。其人の感もまた深し。面前に人の過を正すはよし、退きて陰にてそしるべからず。一凡ほめ毀ること、あやまりて理にたがへば、わが人を知らざる不智の程あらはれて恥づかし。つつしんで妄に人を誉めそしるべからず。
-
『墨子』非攻中子墨子言いて曰く、「古者、王公大人の、政を國家に為す者は、情に之を譽むること審らかに、賞罰の當たり、刑政の過失せざるを欲す」と。