呻吟語 / 内篇・談道・胸中許多の冰炭無し
信知困窮抑鬱、貧賤勞苦是我應得底,安富薄榮、歡欣如意是我儻來底,胸中便無許多冰炭。
新字:信知困窮抑鬱、貧賤労苦是我応得底,安富薄栄、歓欣如意是我儻来底,胸中便無許多冰炭。
書き下し
信に知る、困窮抑鬱、貧賤勞苦は是れ我が應に得べき底なり、安富薄榮、歡欣如意は是れ我が儻來底なりと。胸中便ち許多の冰炭無し。
現代語訳
本当に分かってしまえば、行き詰まりも気鬱も、貧しさも卑しさも労苦も、みな自分が受け取って当然のものであり、安らかさや富や小さな栄誉、喜びや思い通りは、たまたま向こうから来たものだと知れます。そうなれば胸の中に、氷と炭のような激しい上がり下がりは無くなります。
解説
苦しみを当たり前、幸いを偶然と置き直す一段です。ふつうは逆で、うまくいくのが当然、つまずくのが不運と考えるから、胸の中が氷と炭のように熱く冷たく振れます。前提を入れ替えるだけで振れ幅が消える。氷炭という一語が体温の上下として実感され、忘れにくい像になっています。やせ我慢ではなく、期待値の置き方の問題として語られているのが特徴です。
この章句が説くこと
逆境順境期待平静氷炭
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