呻吟語 / 内篇・應務・君子は人に敵して以て自ら全うするを欲せず
兩相磨蕩,有皆損無俱全,特大小久近耳。利刃終日斷割,必有缺折之時;砥石終日磨礱,亦有虧消之漸。故君子不欲敵人以自全也。
新字:両相磨蕩,有皆損無倶全,特大小久近耳。利刃終日断割,必有欠折之時;砥石終日磨礱,亦有虧消之漸。故君子不欲敵人以自全也。
書き下し
兩つ相磨蕩すれば、皆な損する有りて俱に全き無し。特だ大小久近のみ。利刃終日斷割すれば、必ず缺折の時有り。砥石終日磨礱すれば、亦た虧消の漸有り。故に君子は人に敵して以て自ら全うするを欲せざるなり。
現代語訳
二つのものが擦れ合えば、どちらも損なわれ、両方が無傷ということはありません。ただ大小と早い遅いの違いがあるだけです。鋭い刃が一日中断ち割れば、必ず欠け折れる時が来ます。砥石が一日中磨り続ければ、これもまた次第にすり減ります。だから君子は、人と敵対して自分だけ無傷でいようとはしません。
解説
刃と砥石という、擦れ合う二つを例に取ります。切るほうも磨るほうも、どちらも減っていく。勝ったほうも無傷ではないという指摘です。争いの勝敗を論ずる前に、参加した時点で損が始まっていると示す構図で、前に出てきた、争う者は二人とも小人だという段とは別の角度から同じ結論に着いています。参加した時点で、損が始まっているという指摘です。
この章句が説くこと
消耗争い刃砥石無傷
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