呻吟語 / 外篇・廣喻・始めは舟す可く、今は車す可し
有過彭澤者,值盛夏風濤拍天,及其反也,則隆冬矣,堅冰可履。問舊館人:「此何所也?」曰:「彭澤。」怒曰:「欺我哉!吾始過彭澤可舟也,而今可車。始也水活潑,而今堅結,無一似昔也,而君曰彭澤,欺我哉!」
新字:有過彭沢者,值盛夏風濤拍天,及其反也,則隆冬矣,堅冰可履。問旧館人:「此何所也?」曰:「彭沢。」怒曰:「欺我哉!吾始過彭沢可舟也,而今可車。始也水活潑,而今堅結,無一似昔也,而君曰彭沢,欺我哉!」
書き下し
彭澤を過ぐる者有り。盛夏の風濤天を拍つに值ふ。其の反るに及べば、則ち隆冬なり。堅冰履む可し。舊館人に問ふ、「此れ何の所ぞ」と。曰く、「彭澤」と。怒りて曰く、「我を欺くかな。吾始め彭澤を過ぐるに舟す可きなり。而るに今は車す可し。始めや水活潑たり。而るに今は堅結す。一も昔に似たる無し。而るに君は彭澤と曰ふ。我を欺くかな」と。
現代語訳
彭沢を通った者がいました。真夏で風と波が天を打つ時でした。帰りになると真冬で、堅い氷の上を歩けました。昔の宿の人に尋ねました。ここはどこか。答えて言う。彭沢です。怒って言いました。私を欺くのか。私が初めて彭沢を通ったときは舟で行けた。今は車で行ける。初めは水が活き活きしていた。今は堅く凍っている。一つも昔に似ていない。それなのにあなたは彭沢と言う。私を欺くのか。
解説
同じ場所が夏と冬で姿を変えるのを、別の場所だと言い張る話です。舟で渡った所を車で渡り、活き活きした水が凍っています。確かに一つも似ていません。しかし場所は同じです。表に現れた姿だけで同一性を判断する誤りが、旅人の怒りという形で示されています。人の変化を見るときにも、同じ誤りが起こります。人の変化を見るときにも、同じ誤りが起こります。
この章句が説くこと
彭沢夏冬同一性外見誤り
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