呻吟語 / 外篇・治道・是非將た安くにか決を取らん
有聖人於此,與十人論爭,聖人之論是矣,十人亦各是己論以相持,莫之能下。旁觀者至有是聖人者,有是十人者,莫之能定。必有一聖人至,方是聖人之論;而十人者,旁觀者,又未必以後至者為聖人,又未必是聖人之是聖人也,然則是非將安取決哉?昊天詩人,怨王惑於邪謀,不能斷以從善。噫!
新字:有聖人於此,与十人論争,聖人之論是矣,十人亦各是己論以相持,莫之能下。旁観者至有是聖人者,有是十人者,莫之能定。必有一聖人至,方是聖人之論;而十人者,旁観者,又未必以後至者為聖人,又未必是聖人之是聖人也,然則是非将安取決哉?昊天詩人,怨王惑於邪謀,不能断以従善。噫!
書き下し
聖人此に有り、十人と論爭す。聖人の論は是なり。十人も亦た各おの己の論を是として以て相ひ持し、之を下す能はず。旁觀者に至りては聖人を是とする者有り、十人を是とする者有り、之を定むる能はず。必ず一聖人有りて至りて、方めて是れ聖人の論なり。而して十人なる者、旁觀者は、又た未だ必ずしも後に至る者を以て聖人と為さず。又た未だ必ずしも聖人の是を是とする聖人ならず。然らば則ち是非將た安くにか決を取らん。昊天の詩人は、王の邪謀に惑ひて、斷じて以て善に從ふ能はざるを怨む。噫。
現代語訳
ここに聖人がいて、十人と論争します。聖人の論は正しい。十人もそれぞれ自分の論を正しいとして張り合い、引き下がりません。傍で見ている者にも、聖人を正しいとする者があり、十人を正しいとする者があり、決められません。必ずもう一人の聖人が来て、初めてそれが聖人の論だと分かります。しかし十人も傍観者も、後から来た者を聖人と認めるとは限りません。その聖人が認めた正しさを正しいとも限りません。それなら是非はどこで決まるのでしょうか。昊天の詩人は、王が邪な謀に惑わされて、決断して善に従えないことを怨みました。ああ。
解説
正しさの決め方を、無限後退として描きます。聖人が正しくても、十人は引き下がらず、傍観者も決められません。もう一人の聖人が要りますが、その人を聖人と認めるかどうかがまた決まりません。論理として出口がありません。そして詩経の一句が引かれ、王が決断できないことへの怨みが重ねられます。次の段で、この行き詰まりの答えが示されます。
この章句が説くこと
是非無限後退論争決定行き詰まり
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