呻吟語 / 外篇・治道・聖人の偏なり
夫禮也,嚴於婦人之守貞而疏於男子之縱欲,亦聖人之偏也。今輿隸僕僮皆有婢妾娼女,小童莫不淫狎,以為丈夫之小節而莫之問,陵嫡失所,逼妾殞身者紛紛。恐非聖王之世所宜也,此不可不嚴為之禁也。
新字:夫礼也,厳於婦人之守貞而疏於男子之縦欲,亦聖人之偏也。今輿隸僕僮皆有婢妾娼女,小童莫不淫狎,以為丈夫之小節而莫之問,陵嫡失所,逼妾殞身者紛紛。恐非聖王之世所宜也,此不可不厳為之禁也。
書き下し
夫れ禮や、婦人の貞を守るに嚴にして男子の欲を縱にするに疏なるは、亦た聖人の偏なり。今輿隸僕僮も皆な婢妾娼女有り、小童も淫狎せざる莫し。以て丈夫の小節と為して之を問ふ莫し。嫡を陵ぎて所を失ひ、妾を逼りて身を殞す者紛紛たり。恐らくは聖王の世の宜しき所に非ざるなり。此れ嚴に之が禁を為さざる可からざるなり。
現代語訳
礼が、婦人の貞節を守ることに厳しく、男子が欲を恣にすることに疎いのは、聖人の偏りです。今は駕籠かきや下男でさえみな妾や娼を持ち、幼い者まで淫らに戯れない者がありません。それを男子の小さな節目として誰も問いません。正妻をないがしろにして居場所を失わせ、妾を追い詰めて命を落とさせる者が後を絶ちません。おそらく聖王の世にふさわしいことではありません。これは厳しく禁じないわけにいきません。
解説
礼の非対称を、聖人の偏りとはっきり書きます。婦人の貞節には厳しく、男子の放縦には疎い。聖人の名を挙げて偏りと言い切るのは大胆です。そして現状が示されます。身分の低い者まで妾を持ち、幼い者まで戯れ、誰も問わない。結果として正妻が居場所を失い、妾が命を落とします。実害を根拠に、規範の側の是正を求めた一段です。
この章句が説くこと
礼偏り非対称放縦実害
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