呻吟語 / 内篇・修身・四惡無ければ也た還た一分の人と算ふ
士大夫居鄉,無論大有裨益,只不違禁出息,倚勢侵陵,受賄囑托,討佔夫役,無此四惡,也還算一分人。或曰:「家計蕭條,安得不治生?」曰:「治生有道,如此而後治生,無勢可藉者死乎?」或曰:「親族有事,安得不伸理?」曰:「官自有法,有訟必藉請謁,無力可通者死乎?」士大夫無窮餓而死之理,安用寡廉喪恥若是。
新字:士大夫居鄉,無論大有裨益,只不違禁出息,倚勢侵陵,受賄囑托,討佔夫役,無此四悪,也還算一分人。或曰:「家計蕭条,安得不治生?」曰:「治生有道,如此而後治生,無勢可藉者死乎?」或曰:「親族有事,安得不伸理?」曰:「官自有法,有訟必藉請謁,無力可通者死乎?」士大夫無窮餓而死之理,安用寡廉喪恥若是。
書き下し
士大夫鄉に居るに、大いに裨益有るを論ずる無く、只だ禁を違へて息を出ださず、勢に倚りて侵陵せず、賄を受けて囑托せず、夫役を討ち佔めず。此の四惡無ければ、也た還た一分の人と算ふ。或るひと曰く、「家計蕭條たり、安くんぞ生を治めざるを得んや」と。曰く、「生を治むるに道有り。此の如くして後に生を治めば、勢の藉る可き無き者は死せんか」と。士大夫に窮餓して死するの理無し。安くんぞ廉を寡くし恥を喪ふこと是の若きを用ひん。
現代語訳
士大夫が郷里にいるとき、大いに益することは措くとしても、ただ禁を犯して高利を貸さず、権勢を頼んで侵さず、賄賂を受けて口利きをせず、人夫を徴発して囲い込まない。この四つの悪が無ければ、まだ一分の人と数えられます。ある人が言いました。家計が苦しい、どうして生計を立てずにいられましょう。答えて言う。生計の立て方には道があります。このようにして生計を立てるなら、頼れる権勢の無い者は死ねというのでしょうか。士大夫が飢え死にする道理はありません。どうしてここまで廉を減らし恥を失う必要があるでしょうか。
解説
郷里に居る士大夫の最低線を、四つの禁止で示します。高利貸し、権勢による侵害、賄賂の口利き、人夫の徴発。そして家計が苦しいという反論に、権勢の無い者はどうするのかと問い返します。特権が無ければ死ぬのかという反問が鋭く、言い訳を封じる形になっています。飢え死にする道理は無いという断言も力強い一段です。特権が無ければ死ぬのか、という反問が言い訳を封じます。
この章句が説くこと
廉潔特権生計言い訳最低線
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