呻吟語 / 内篇・應務・說くを要する的は盡く都て說け
某居官,厭無情者之多言,每裁抑之。蓋無厭之欲,非分之求,若以溫顏接之,彼懇乞無已,煩瑣不休,非嚴拒則一日之應酬幾何?及部署日看得人有不盡之情,抑不使通,亦未盡善。嘗題二語於私署云:「要說的盡著都說,我不嗔你;不該從未敢輕從,你休怪我。」或曰:「畢竟往日是。」
新字:某居官,厭無情者之多言,毎裁抑之。蓋無厭之欲,非分之求,若以温顏接之,彼懇乞無已,煩瑣不休,非厳拒則一日之応酬幾何?及部署日看得人有不尽之情,抑不使通,亦未尽善。嘗題二語於私署云:「要説的尽著都説,我不嗔你;不該従未敢軽従,你休怪我。」或曰:「畢竟往日是。」
書き下し
某官に居り、無情なる者の多言なるを厭ひ、每に之を裁抑す。蓋し無厭の欲、非分の求めは、若し溫顏を以て之に接せば、彼懇乞已む無く、煩瑣休まず。嚴拒するに非ずんば則ち一日の應酬幾何ぞ。部署の日に及びて、人に不盡の情有るを看得るに、抑へて通ぜしめざるも、亦た未だ善を盡くさず。嘗て二語を私署に題して云ふ、「說くを要する的は盡く都て說け、我你を嗔らず。從ふ可からざる的は未だ敢へて輕く從はず、你我を怪しむを休めよ」と。
現代語訳
私は官にあったころ、情の無い者が多く言い立てるのを嫌い、いつも押さえつけていました。際限のない欲や分を越えた求めは、温かい顔で接すれば、相手は願い続けて煩わしさが止まりません。厳しく拒まなければ、一日の応対がどれほどになるでしょうか。しかし部署にいる日々のうちに、人には言い尽くせない情があると分かり、押さえて通じさせないのも十分ではないと気づきました。かつて二つの言葉を自分の役所に書き掲げました。言いたいことはすべて言いなさい、私はあなたを怒りません。従えないことは軽々しく従いません、あなたも私を怪しまないでください。
解説
要求を押さえつけていた自分の方針を、後になって改めた記録です。厳しく拒まなければ応対が終わらないという事情は認めつつ、言わせないのも十分ではないと気づく。そして掲げた二句が見事です。言うのは自由、しかし従うかどうかは別。入口を開いて出口を締めるという分離で、対応の負担と相手の納得を両立させています。
この章句が説くこと
要求応対分離掲示改め
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