呻吟語 / 外篇・品藻・其の賊道たること均し
今之論人者,於辭受不論道義,只以辭為是,故辭寧矯廉,而避貪愛之嫌。於取與不論道義,只以與為是,故與寧傷惠,而避吝嗇之嫌。於怨怒不論道義,只以忍為是,故禮雖當校,而避無量之嫌。義當明分,人皆病其諛而以倨傲矜陵為節概;禮當持體,人皆病其倨而以過禮足恭為盛德。惟儉是取者,不辯禮有當豐;惟默是貴者,不論事有當言。此皆察理不精,貴賢知而忘其過者也。噫!與不及者誠有間矣,其賊道均也。
新字:今之論人者,於辞受不論道義,只以辞為是,故辞寧矯廉,而避貪愛之嫌。於取与不論道義,只以与為是,故与寧傷恵,而避吝嗇之嫌。於怨怒不論道義,只以忍為是,故礼雖当校,而避無量之嫌。義当明分,人皆病其諛而以倨傲矜陵為節概;礼当持体,人皆病其倨而以過礼足恭為盛徳。惟倹是取者,不弁礼有当豊;惟黙是貴者,不論事有当言。此皆察理不精,貴賢知而忘其過者也。噫!与不及者誠有間矣,其賊道均也。
書き下し
今の人を論ずる者は、辭受に於て道義を論ぜず、只だ辭するを以て是と為す。故に辭は寧ろ矯廉にして、貪愛の嫌を避く。取與に於て道義を論ぜず、只だ與ふるを以て是と為す。故に與ふるは寧ろ惠を傷りて、吝嗇の嫌を避く。義は當に分を明らかにすべきに、人皆な其の諛を病みて倨傲矜陵を以て節概と為す。禮は當に體を持すべきに、人皆な其の倨を病みて過禮足恭を以て盛德と為す。惟だ儉のみ是れ取る者は、禮に當に豐かなるべき有るを辯ぜず。惟だ默のみ是れ貴ぶ者は、事に當に言ふべき有るを論ぜず。
現代語訳
今の人物評は、受けるか辞退するかについて道義を論ぜず、ただ辞退すれば正しいとします。だから辞退は無理をしてまで清廉ぶり、貪欲だという疑いを避けます。取るか与えるかについて道義を論ぜず、ただ与えれば正しいとします。だから与えることは恵みを損なってまで、吝嗇だという疑いを避けます。義は分をはっきりさせるべきなのに、人はへつらいを嫌って、驕り高ぶることを節操だとします。礼は体面を保つべきなのに、人は尊大さを嫌って、度を越した恭しさを盛んな徳だとします。倹約だけを取る者は、礼には豊かであるべき場合があると弁えません。沈黙だけを貴ぶ者は、事には言うべき場合があると論じません。
解説
この章句が説くこと
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