呻吟語 / 外篇・人情・愚者を以て智者の忽せにする所に當たる
乍見之患,愚者所驚;漸至之殃,智者所忽也。以愚者而當智者之所忽,可畏哉!
新字:乍見之患,愚者所驚;漸至之殃,智者所忽也。以愚者而当智者之所忽,可畏哉!
書き下し
乍ちに見るの患ひは、愚者の驚く所なり。漸く至るの殃ひは、智者の忽せにする所なり。愚者を以て智者の忽せにする所に當たるは、畏る可きかな。
現代語訳
突然目に入る患いは、愚かな者でも驚きます。じわじわ至る災いは、智恵ある者でも見過ごします。愚かな者が、智恵ある者でさえ見過ごすものに当たるのは、恐ろしいことです。
解説
じわじわ至る災いの恐ろしさを、人の側から言い直します。突然の患いは愚者でも驚けるので、誰でも気づきます。しかしじわじわ来るものは智者でさえ見過ごします。そこへ愚者が当たればどうなるか。治道篇で繰り返された漸の主題が、ここでは気づく力の差として述べられ、より切実な形になっています。気づく力の差として述べられ、切実さが増しています。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
漸突然愚者智者見過ごし
関連する章句
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『驢鞍橋』卷中僧問ふ、智者は下劣なりと雖も青天に登り、愚者は高位なりと雖も泥犁に沈む。此の意如何。師云はく、智者とは、無我無人と成て、一切を離れた人也。此の人は、国王にも何にも望があつてこそ、此の機は青天の上に登つた機也。愚者は高位に在りても、物毎に逢着して、物の下と成り沈み果て居る者也。
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盲安杖・第五条・分限を見分て其性々を知るべき事・前半分限を見分て其性々を知れ。先よき人の云ふは如何にも心けだかく。自を忘て他の為を思ひ。情を先として憐み深く。是非分明にして心柔かに。忠孝の行ひ正しく。万人に誠ありて悪き人をも捨ず。高位に在て誇る心なく。へりくだりて慢る心なし。世の常の人は。義理を知りて世に反かず。人の嘲笑を顧て身を慎み愚痴心を戒め。仮りにも道を学び賢なるを敬ひ。智あるに親く。忠孝の行に背かず仁義を心にかけ。家職を守りて命を軽んじ。名を万代に遺さん事を本意とす。愚なる人は忠孝を勤むるに似て志定らず。仁義を学びて誠なし。名利を専として一度は恥を知り一度は忘れ。一方へは義理を正し一方へは背き。物を憐む心あれども亦人の憂を顧ず。親き中も背き易く機に従ふを善とし。正くして従ざるを憎み。我才学と顕して人に優らん事を思ひ。理非を知ても分明ならず。好む方へは誘かれ。嫌ふ方へは疎くして和らぐ心すくなく。無欲なれども賤く。頼もしけれども其甲斐なく。浅き心に任せて人の上を謀れども身の節を慥に知ず。分別愚かにして正しからざる故に。濫に心動きて世に背く事多し。下愚の人ハかりそめにも。心柔なる善き人を嘲り賢なるを憎み。賤きに親しくして人の悪きを悦び秀る人をそねみ。利根だてを面よりして人をは浅く見なし。身の上より自慢して恩をば速に忘れ。少しの仇に長き怨を結び。わづかの事に怒りを成し。夫を却て利口にし。罰をも知らで欲深く。是非をも更に弁へず。
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『韓非子』孤憤第十一是れ當塗者の徒屬、愚にして患を知らざる者に非ずんば、必ず污にして姦を避けざる者なり。
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『法句経』第二十 道の部 二八六〜二八八 眠れる村を漂わす暴流二八六 秋には我れ此処に住まるべし、冬に亦夏には此処に(住まるべし)、斯く愚者は思惟して死(の到る)を覚らず。 二八七 子孫と家畜に狂酔し執著する人を死は捕へ去る、暴流が眠れる村を(漂はす)如く。 二八八 子も救ふ能はず、父も亦友も親戚も救ひ得じ、死に捕はれたるものを。
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『呻吟語』外篇・治道・其の由りて來たる所は漸なり人情の忽せにし易き所は、漸に如くは莫し。天下の大いに畏る可きは、漸に如くは莫し。漸の始めや、君子と雖も以て意と為さず。其の當に防ぐべしと謂ふ者有るも、君子と雖も亦た以て迂と為す。其の極めて重く反らざるの勢ひは、天地聖人も亦た之を如何ともする無きを知らざるなり。其の由りて來たる所の者は漸なり。
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『呻吟語』外篇・世運・頓は終に力を著け、漸は始めに力を著く天下の勢は頓は為す可きも、漸は為す可からず。頓の來たるや驟驟にして多く根無し。漸の來たるや深深にして則ち撼かし難し。頓は力を著くること終に在り、漸は力を著くること始めに在り。