呻吟語 / 内篇・談道・此の香は便ち是れ禮
與友人論天下無一物無禮樂,因指几上香曰:「此香便是禮,香煙便是樂;坐在此便是禮,一笑便是樂。」
新字:与友人論天下無一物無礼楽,因指几上香曰:「此香便是礼,香煙便是楽;坐在此便是礼,一笑便是楽。」
書き下し
友人と天下に一物として禮樂無きは無しと論じ、因りて几上の香を指して曰く、「此の香は便ち是れ禮、香煙は便ち是れ樂なり。此に坐するは便ち是れ禮、一笑は便ち是れ樂なり」と。
現代語訳
友人と、世の中に礼楽でないものは一つも無いと論じ、そこで机の上の香を指して言いました。この香がそのまま礼であり、立ちのぼる煙がそのまま楽です。ここに座っているのがそのまま礼であり、ひとつ笑うのがそのまま楽です。
解説
難しい議論を、机の上の香ひとつで示してみせた場面です。形を保つものが礼、和ませ流れるものが楽。そう見れば、座っていることも笑うことも礼楽になります。抽象語を身近な物に落とす手際が見事で、前の段で礼楽が失われたと嘆いた人が、同時にそれはここにあると指さしている。失われたのは制度であって、原理は目の前にあるという読み方ができます。
この章句が説くこと
礼楽日常香具体一体
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