呻吟語 / 内篇・談道・權は豫め設く可からず
事有豫而立,亦有豫而廢者。吾曾豫以有待,臨事鑿枘不成,竟成棄擲者。所謂權不可豫設,變不可先圖,又難執一論也。
新字:事有予而立,亦有予而廃者。吾曽予以有待,臨事鑿枘不成,竟成棄擲者。所謂権不可予設,変不可先図,又難執一論也。
書き下し
事に豫めして立つ有り、亦た豫めして廢るる者有り。吾れ曾て豫めして以て待つ有りしも、事に臨みて鑿枘合はず、竟に棄擲と成る者あり。所謂る權は豫め設く可からず、變は先に圖る可からずとは、又た一を執りて論じ難きなり。
現代語訳
備えておいたから成る事もあれば、備えておいたから駄目になる事もあります。私も以前、準備して待ち構えていたのに、いざとなると木組みのほぞと穴が合わず、結局は捨てることになったことがありました。臨機の判断はあらかじめ決めておけない、変化は先回りして図れないと言われるのは、こういうことで、一つの原則で割り切れないのです。
解説
備えあれば憂いなしという常識に、正面から但し書きをつけます。しかも自分が失敗した例を先に出すのが呂坤らしいところです。準備した型に現実を当てはめようとして、ほぞと穴が合わなかった、と。前もって決められるのは方針までで、臨機の判断は現場でしか出せません。準備の価値を否定せず、準備の効かない領域を切り分けた実務的な段です。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
準備臨機変化計画現場
関連する章句
-
李衛公問対・卷上《孫子》に謂う、『多筭は少筭に勝つ』と。以て少筭の無筭に勝つを知る有り。凡そ事皆な然り。
-
『大和俗訓』巻之七・躬行下一今日は明日の計をなし、今月は来月の計をなし、今年は来年の計をなし、平生は一生の計をなし、生前に早く死後の計をなすべし。おこたるべからず。一明日行ふべき事あらば、必今日より其事を思ひはかりて定むべし。明朝使をつかはし、文をおくらんと思はば、今夕より書きととのへて、使を命ずべし。其日の事を其日はじめて思案しいとなめば、はかゆかず、事にのぞみて、或はさまたげ出来、まぎらはしくて過多し。
-
『大和俗訓』巻之七・躬行下一中庸に、凡そ事予めすれば則ち立ち、予めせざれば則ち廃る、言前に定まれば則ち跲かず、事前に定まれば則ち困しまずといへり。予とはかねてと云ふ意、事を前に定むるなり。万事かねて思案して定むれば、事立ちて行はる。さなければ、事すたりて行はれず。物いふにも、かねて先思案していへば、言つまづかず。事を行ふにも、かねて思案して定むれば、事にのぞみて、行きあたり、くるしまず。
-
孫子・形篇是の故に勝兵はまず勝ちて後に戦い、敗兵はまず戦いて後に勝ちを求む。
-
『武訓』下・第4段義貞軍記曰、曾我祐成時宗が、親の敵を打ちしと、後輩これを學ぶべからず。若、成人の後、かくのごとく、年を送りて、いかなる橫死にも逢ひなば、永く本意を空しくして、家の疵なるべし。只、親の敵をばのがすべからず。機嫌をも計るべからず。即時に押寄せて、勝負を決すべし。敵運あらば、我が命を捨てたらんと、達しぬとす。篤信謂、此の說、近世の儒、亦、是をよしとする者あり。我おもふに、しからず。父の讎ある者は、本意をとぐるを主とす。兵法に、謀を專として、勝つことをとるにおなじ。敵のちから士卒の多少、たとひ、我とひとしき者なりとも、必、用意をなし、謀をこのんで、事をなしとげんとこそ、君子の本意ならめ。敵と我との强弱をはからず、只、即時に押よせて、なまじひに、卒爾のはたらきして、しそんじたらば、本意をとげずして、人の物わらひとぞなるべき。
-
言志四録・言志晩録 別存 第七条 進講の前日は心斎す公進講有る毎に、前一日心斎して家に在り。緊要急務有るに非ざれば、則ち客来るも面せず。蓋し此くの如くならざれば、則ち講に臨みて以て主聴を竦ましむるに足らず。余竊かに敬服す。