呻吟語 / 外篇・天地・還た一盆の水と化す
六合中洪纖動植之物,都是天出氣、地出質熔鑄將出來,都要消磨無跡還他。故物不怕是金石,也要歸於無。蓋從無中生來,定要都歸無去。譬之一盆水,打攪起來大小浮漚以千萬計,原是假借成的,少安靜時,還化為一盆水。
新字:六合中洪繊動植之物,都是天出気、地出質熔鋳将出来,都要消磨無跡還他。故物不怕是金石,也要帰於無。蓋従無中生来,定要都帰無去。譬之一盆水,打攪起来大小浮漚以千万計,原是仮借成的,少安静時,還化為一盆水。
書き下し
六合中の洪纖動植の物は、都て是れ天氣を出だし地質を出だし熔鑄し將ち出だし來たる。都て消磨して跡無く他に還るを要す。故に物は金石なるを怕れず、也た無に歸するを要す。蓋し無中より生じ來たれば、定めて都て無に歸し去る。之を一盆の水に譬ふれば、打ち攪き起こせば大小の浮漚千萬を以て計る。原と是れ假借して成る的なり。少しく安靜なる時、還た一盆の水と化す。
現代語訳
天地四方の大小の動植物は、みな天が気を出し地が質を出して溶かし鋳込んで作られたものです。みな磨り減って跡も無くそこへ返らねばなりません。だから物は金や石であっても、無に帰らねばなりません。無の中から生まれてきたのだから、必ずみな無へ帰っていきます。たらいの水にたとえれば、かき回せば大小の泡が千も万も立ちます。もともと借りて形になったものです。少し静まれば、また一杯の水に戻ります。
解説
生き物の生と滅を、たらいの水と泡でたとえます。かき回せば無数の泡が立ち、静まれば元の水に戻る。泡は水を借りて形になっただけで、独立した実体ではありません。金石でさえ例外なく無に帰るという前提が置かれ、生滅が水面の現象として描かれます。忘れがたい像を持つ一段です。泡は水を借りて形になっただけの、独立した実体ではありません。
この章句が説くこと
生滅泡水無仮の形
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・天地・陰陽は萬物に原と相干せず萬物は陰陽に生じ、陰陽に死す。陰陽は萬物に於て原と相干せず、其の自然に任するのみ。雨は物を潤さんと欲するに非ず、旱は物を熯さんと欲するに非ず、風は物を撓さんと欲するに非ず、雷は物を震はんと欲するに非ず。陰陽は其の氣の自然に任せて、萬物之に因りて以て生死するのみ。若し心有りて化を成さば、則ち寒暑災樣其の正を得て、乃ち天心を見んか。
-
『呻吟語』外篇・天地・皆な母に歸す天地萬物は頭に到り來たれば皆な母に歸す。故に水・火・金・木は盡くる有りて、土は盡きず。何となれば、水・火・金・木は、氣は天に盡き、質は地に盡く。而して土に盡く可き無ければなり。故に真氣に歸する無く、真形に藏する無し。萬古磨滅す可からず。滅し了はれば更に開闢の時無し。所謂る混沌なる者は、真氣と真形と分かれざるなり。形氣混じて天地を生じ、形氣分かれて萬物を生ず。
-
『呻吟語』外篇・天地・盆沼に開闢を看る問ふ、「天地開闢の初め、其の狀何に似たるか」と。曰く、「未だ形容し易からず」と。因りて齋前の盆沼を指し、滿ちて沙を帶ぶる水一盆を貯へ、投ずるに瓦礫數小塊、穀豆升許を雜へ、人をして水を攪きて渾濁せしめて曰く、「此れは是れ混沌未分の狀なり。三日の後を待ちて再び來たりて開闢を看よ」と。日に至りて濁れる者清めり。輕清上に浮かぶ。曰く、「此れは是れ天の子に開くなり。底に沉む渾泥、此れは是れ地の丑に辟くなり。中間の瓦礫出露するは、此れは是れ山陵なり」と。
-
『呻吟語』外篇・天地・無氣則不存、無形則不住天地萬物は只だ是れ一氣の聚散のみ、更に別個無し。形なる者は、氣の附きて以て凝結と為る所なり。氣なる者は、形の托して以て運動と為る所なり。氣無ければ則ち形存せず、形無ければ則ち氣住まらず。
-
『呻吟語』外篇・天地・元氣は形化氣化の祖なり乾坤は是れ毀るる的なり。故に開闢の後必ず混沌有り。主宰する所以は何ぞ。乾坤は是れ毀れざる的なり。故に混沌還た開闢と成る。主宰する者は何ぞ。元氣是れのみ。元氣は萬億の歲年に亙りて終に磨滅せず。是れ形化氣化の祖なり。
-
『呻吟語』外篇・天地・形は氣より生ず形は氣より生ず。氣化沒有底ならば、天地定然として沒有ならん。天地沒有底ならば、萬物定然として沒有ならん。