呻吟語 / 外篇・治道・盈卮を捧ぐる者
氣運怕盈,故天下之勢不可使之盈。既盈之勢,便當使之損。是故不測之禍,一朝之忿,非目前之積也,成於勢盈。勢盈者,不可不自損。捧盈卮者,徐行不如少挹。
新字:気運怕盈,故天下之勢不可使之盈。既盈之勢,便当使之損。是故不測之禍,一朝之忿,非目前之積也,成於勢盈。勢盈者,不可不自損。捧盈卮者,徐行不如少挹。
書き下し
氣運は盈つるを怕る。故に天下の勢ひは之をして盈たしむ可からず。既に盈つるの勢ひは、便ち當に之をして損ぜしむべし。是の故に不測の禍、一朝の忿りは、目前の積に非ず、勢盈に成る。勢盈なる者は、自ら損ぜざる可からず。盈卮を捧ぐる者は、徐ろに行くは少しく挹むに如かず。
現代語訳
気運は満ちることを恐れます。だから天下の勢いは満たしてはいけません。すでに満ちた勢いは、減らすべきです。だから思いがけない禍や一朝の怒りは、目の前で積もったものではなく、勢いが満ちたことから生まれます。勢いが満ちた者は、自分から減らさないわけにいきません。満ちた杯を捧げ持つ者は、ゆっくり歩くより少し汲み出すほうがよいのです。
解説
満ちることそのものを危険とし、自分から減らせと言います。最後の比喩が要点で、満ちた杯を運ぶとき、ゆっくり歩くより中身を少し減らすほうがよい。慎重に扱うより量を減らせという発想です。突然の禍も一朝の怒りも、その場で積もったものではなく満ちた勢いから生まれる、と原因が遡られます。持てる力を自分から減らすという、実行の難しい処方ですが、比喩のおかげで納得しやすくなっています。
この章句が説くこと
盈損杯減らす禍
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