呻吟語 / 内篇・修身・一息尚ほ存するをや
一日與友人論身修道理,友人曰:「吾老矣。」某曰:「公無自棄。平日為惡,即屬行時幹一好事,不失為改過之鬼,況一息尚存乎?」
新字:一日与友人論身修道理,友人曰:「吾老矣。」某曰:「公無自棄。平日為悪,即属行時幹一好事,不失為改過之鬼,況一息尚存乎?」
書き下し
一日友人と身を修むる道理を論ず。友人曰く、「吾老いたり」と。某曰く、「公自ら棄つる無かれ。平日惡を為すも、即ち行く時に屬して一好事を幹さば、過ちを改むるの鬼と為るを失はず。況んや一息尚ほ存するをや」と。
現代語訳
ある日、友人と身を修める道理を論じました。友人が言いました。私はもう老いました。私は言いました。どうかご自分を見捨てないでください。平生悪をなしてきた人でも、いよいよという時に一つ善い事をすれば、過ちを改めた亡者になれます。まして息がまだ一つ残っているのですから。
解説
もう遅いという嘆きに、過ちを改めた亡者という思いがけない言葉で答えます。死に際の一件でも数に入るのだから、まだ息のあるうちなら言うまでもない、という論法です。ぎりぎりの下限を先に示して、そこから逆算する励まし方が巧みでしょう。友人との会話の形で残されているぶん、説教ではなく肉声として伝わります。下限を示してから逆算する、巧みな励まし方です。
この章句が説くこと
改過老い手遅れ励まし余生
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