呻吟語 / 内篇・修身・善を取りて用ひず
取善而不用,依舊是尋常人,何貴於取?譬之八珍方丈而不下箸,依然餓死耳。
新字:取善而不用,依旧是尋常人,何貴於取?譬之八珍方丈而不下箸,依然餓死耳。
書き下し
善を取りて用ひざれば、依舊として是れ尋常の人なり。何ぞ取るを貴ばん。之を譬ふれば八珍方丈にして箸を下さざれば、依然として餓死するのみ。
現代語訳
善い言葉を取り入れても使わなければ、相変わらず並の人です。取り入れることに何の値打ちがあるでしょうか。たとえれば、八つの珍味を一丈四方に並べても箸をつけなければ、そのまま餓死するだけです。
解説
前の段で、誰の言葉でも良ければ取れと説いた直後に、取るだけでは無意味だと続けます。並べた御馳走に箸をつけなければ餓死するという比喩が痛烈で、集めることと食べることの違いを一撃で示します。本を読み、話を聞き、良い言葉を集めて満足してしまう癖への批評です。取り入れる段と使う段を、はっきり二つに分けた一段になっています。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
実行知識取り入れ無用実践
関連する章句
-
伝習録・薛侃録問う、「上智・下愚は如何ぞ移すべからざるか」と。先生曰く、「是れ移すべからざるに非ず。只だ是れ移るを肯んぜざるなり」と。
-
尚書・說命中之を知るの艱きに非ず、之を行うの惟れ艱し。
-
『不動智神妙録』一心の明らめやう世の中に心を知らぬ人は可有候、能く明らめ候人は稀にも有りがたく見及び候、たまたま明らめ知る事もまた行ひ候事成り難く、此の一心を能く説くとて心を明めたるにてはあるまじく候、水の事を講釈致し候とても口はぬれ不申候火を能く説くとも口は熱からず、誠の水誠の火に触れてならでは知れぬもの也。書を講釈したるまでにては知れ不申候、食物をよく説くとてもひだるき事は直り不申候、
-
『呻吟語』内篇・修身・義を見て為さず、之を眾に違ふに托す義を見て為さず、又た之を眾に違ふに托す。此れ力行する者の大戒なり。若し肯へて務實し、又た自ら名を逃れば、術無きを患へず。吾竊かに以て自ら恨む。
-
『後世への最大遺物』第二回・人に頼らず天と己にたよるその考えを持ったばかりでなく、その考えを実行した。その話は長うございますけれども、ついには何万石という村々を改良して、自分の身をことごとく人のために使った。旧幕の末路にあたって、経済上、農業改良上について非常の功労のあった人であります。それでわれわれもそういう人の生涯、二宮金次郎先生のような人の生涯を見ますときに、「もしあの人にもああいうことができたならば、私にもできないことはない」という考えを起します。普通の考えではありますけれども、非常に価値のある考えであります。それで人に頼らずとも、われわれが神にたより己にたよって宇宙の法則に従えば、この世界はわれわれの望むとおりになり、この世界にわが考えを行うことができるという感覚が起ってくる。
-
論語・子罕篇子曰く、之に語げて惰らざる者は、其れ回なるか。