呻吟語 / 内篇・修身・初めて發する時に人欲を制す
學者視人欲如寇仇,不患無攻治之力,只緣一向姑息他如驕子,所以養成猖獗之勢,無可奈何,故曰識不早,力不易也。制人欲在初發時,極易剿捕,到那橫流時,須要奮萬夫莫當之勇,才得濟事。
新字:学者視人欲如寇仇,不患無攻治之力,只縁一向姑息他如驕子,所以養成猖獗之勢,無可奈何,故曰識不早,力不易也。制人欲在初発時,極易剿捕,到那横流時,須要奮万夫莫当之勇,才得済事。
書き下し
學者人欲を視ること寇仇の如くんば、攻治の力無きを患へず。只だ一向に他を姑息すること驕子の如きに緣る。所以に猖獗の勢を養成して、奈何ともす可き無し。故に曰く、識ること早からざれば、力易からずと。人欲を制するは初めて發する時に在り、極めて剿捕し易し。那の橫流する時に到らば、須らく萬夫も當たる莫きの勇を奮ふべく、才かに事を濟すを得ん。
現代語訳
学ぶ者が人の欲を仇敵のように見るなら、攻め治める力が足りないことはありません。ただひたすら甘やかして、放蕩な子を扱うようにするから、荒れ狂う勢いを育ててしまい、手がつけられなくなるのです。だから、気づくのが早くなければ力が容易でない、と言うのです。欲を抑えるのは最初に起こった時で、そこなら討ち取るのは実に易しい。あふれ流れる段になれば、万人でも敵わない勇を奮ってようやく事が済みます。
解説
欲を抑える難しさを、時期の問題として説明します。最初なら易しく、あふれてからは万人分の勇が要る。力が足りないのではなく、気づくのが遅いのだ、と。しかも甘やかす様子を放蕩な子にたとえ、育ててしまうのは自分だと示します。前に出てきた、近道が踏み固められる話と同じ、早期の一手を説く一段です。力が足りないのではなく、気づくのが遅いだけなのです。
この章句が説くこと
人欲早期甘やかし時期抑制
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