呻吟語 / 外篇・廣喻・感じて應ぜざる者有らんや
木鐘撞之也有木聲,土鼓擊之也有土響,未有感而不應者也,如何只是怨尤?或曰:「亦有感而不應者。」曰:「以發擊鼓,以羽撞鐘,何應之有?」
新字:木鐘撞之也有木声,土鼓擊之也有土響,未有感而不応者也,如何只是怨尤?或曰:「亦有感而不応者。」曰:「以発擊鼓,以羽撞鐘,何応之有?」
書き下し
木鐘も之を撞けば也た木聲有り、土鼓も之を擊てば也た土響有り。未だ感じて應ぜざる者有らざるなり。如何ぞ只だ是れ怨尤するか。或るひと曰く、「亦た感じて應ぜざる者有り」と。曰く、「發を以て鼓を擊ち、羽を以て鐘を撞かば、何の應か之れ有らん」と。
現代語訳
木の鐘も撞けば木の音があり、土の鼓も打てば土の響きがあります。感じて応じないものはありません。どうしてただ怨み咎めてばかりいるのでしょうか。ある人が言いました。感じても応じないものもあります。答えて言う。髪の毛で鼓を打ち、羽で鐘を撞いて、何の応えがあるでしょうか。
解説
感応の原理を、まず全面的に認めます。木の鐘でも土の鼓でも、撞けば音が出る。だから応えが無いと怨むのはおかしい、と。そして反論に対する答えが鋭く、髪の毛で鼓を打ち羽で鐘を撞いているのではないかと返されます。応えが無いのは相手のせいではなく、こちらの働きかけが弱すぎるからだという指摘になっています。応えが無いのは、こちらの働きかけが弱いからです。
この章句が説くこと
感応鐘鼓怨み弱さ返し
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・廣喻・一貫の說鐘一たび鳴らば、萬戶千門に耳有る者は其の聲を入れざる莫し。而して聲は足らざるに非ず。鐘をして百里無人の野に鳴らしめば、一人も之を聞く無し。而して聲は餘り有るに非ず。鐘は人人に其の聲を分送して之を入らしむるに非ず、人人は鐘の聲に足を取りて以て吾が耳を盈たすに非ず。此れ一貫の說なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・人を曉すは當に是の如くなるべきか固より之をして愧ぢしむ可きに、乃ち之をして怨ましむ。固より之をして悔いしむ可きに、乃ち之をして怒らしむ。固より之をして感ぜしむ可きに、乃ち之をして恨ましむ。人を曉すは當に是の如くなるべきか。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・天地萬物は一氣なり四時の氣は、先づ萬物を感ぜしめて、萬物應ず。應ずる所以の者は何ぞや。天地萬物は一氣なればなり。故に春感じて糞壤の氣升り、雨感じて礎石先づ潤ふ。磁石動きて針轉じ、陽燧映じて火生ず。況んや知有るをや。天を格し物を動かすは、只だ是れ這個の道理なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・淡然として之に安んず或るひと問ふ、「怨尤の念、底だ克ち難し。奈何」と。曰く、「君自來怨尤す。怨尤して甚をか出だす。天の水旱虐を為すは人の怨むを怕れず、死は自ら死するのみ、水旱は自若たり。人の貪殘厭く無きは你の尤むるを怕れず、恨は自ら恨むのみ、貪殘は自若たり。此れ皆な無可奈何なる者なり。今且く君の自ら修め自ら責むるを望まず、只だ這の無可奈何の事を將て心腸を惱亂し、又た許多の痛苦を添ふ。淡然として之に安んじ、些かの便宜を討むるに若かず」と。其の人大笑して去る。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・勢ひ然らしむるなり無知の物すら尚ほ爾り。勢ひ然らしむるなり。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・萬事必ず故有り鎖鑰は各おの合ふ有り。合へば則ち開き、合はざれば則ち開かず。亦た合ひて開かざる者有り。必ず合ひて開かざる所以の故有らん。亦た終日開くも、偶然に抵死開かざる有り。必ず偶然に開かざる所以の故有らん。萬事必ず故有り。萬事に應ずるには必ず其の故を求む。