呻吟語 / 外篇・治道・本然の職分
為人上者,只是使所治之民個個要聊生,人人要安分,物物要得所,事事要協宜。這是本然職分。遂了這個心,才得暢然一霎歡,安然一覺睡。稍有一民一物一事不妥貼,此心如何放得下?何者?為一郡邑長,一郡邑皆待命於我者也;為一國君,一國皆待命於我者也;為天下主,天下皆待命於我者也。
新字:為人上者,只是使所治之民個個要聊生,人人要安分,物物要得所,事事要協宜。這是本然職分。遂了這個心,才得暢然一霎歓,安然一覚睡。稍有一民一物一事不妥貼,此心如何放得下?何者?為一郡邑長,一郡邑皆待命於我者也;為一国君,一国皆待命於我者也;為天下主,天下皆待命於我者也。
書き下し
人の上たる者は、只だ是れ治むる所の民をして個個聊生せんことを要し、人人安分せんことを要し、物物所を得んことを要し、事事宜しきに協はんことを要す。這れは是れ本然の職分なり。這個の心を遂げてこそ、才めて暢然たる一霎の歡び、安然たる一覺の睡りを得。稍しも一民一物一事の妥貼ならざる有らば、此の心如何ぞ放ち得下さん。何者ぞ。一郡邑の長たれば、一郡邑皆な我に命を待つ者なり。一國の君たれば、一國皆な我に命を待つ者なり。天下の主たれば、天下皆な我に命を待つ者なり。
現代語訳
人の上に立つ者は、ただ治める民が一人一人生計を立てられ、一人一人が分に安んじ、物が一つ一つ居場所を得、事が一つ一つ宜しきにかなうことを求めます。これが本来の職分です。この心が遂げられて初めて、のびやかな一瞬の喜びと、安らかな一眠りが得られます。少しでも一人の民、一つの物、一つの事が落ち着かなければ、この心をどうして下ろせるでしょうか。なぜか。一つの郡邑の長なら、その郡邑はみな自分の命を待つ者です。一国の君なら、一国がみな自分の命を待つ者です。天下の主なら、天下がみな自分の命を待つ者です。
解説
上に立つ者の職分を、四つの個個で示します。一人一人、一つ一つ。そして一つでも落ち着かなければ心を下ろせないと言います。眠りと喜びが条件付きになっているのが印象的で、職分が果たされない限り安らげません。理由は、規模の大小を問わず全員が自分の命を待っているから。郡邑でも国でも天下でも同じ構造だとされ、地位の高低が言い訳にならない形になっています。次の段に続きます。
この章句が説くこと
職分個個眠り待命規模
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