呻吟語 / 外篇・人情・人情を做し得ざる五つ
朝廷法紀做不得人情,天下名分做不得人情,聖賢道理做不得人情,他人事做不得人情,我無力量做不得人情。以此五者徇人,皆安也。君子慎之。
書き下し
朝廷の法紀は人情を做し得ず。天下の名分は人情を做し得ず。聖賢の道理は人情を做し得ず。他人の事は人情を做し得ず。我に力量無くんば人情を做し得ず。此の五者を以て人に徇はば、皆な安きなり。君子之を慎め。
現代語訳
朝廷の法と紀では義理立てができません。天下の名分では義理立てができません。聖賢の道理では義理立てができません。他人の事では義理立てができません。自分に力が無ければ義理立てができません。この五つで人に従えば、みな安易です。君子はこれを慎みなさい。
解説
融通してはならないものを、五つ挙げます。法と紀、名分、道理、他人の事、そして自分に力が無い場合。前の三つは自分のものでないから、四つ目は他人のものだから、五つ目はできないからです。理由が少しずつ違うのに、どれも同じ結論になります。義理立てできる範囲が、自分の持ち物と力の内側だけだと分かる一段です。融通できる範囲が、はっきり示されています。
この章句が説くこと
人情五不可法紀名分力量
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・人情・君子は只だ理に可なるを務む聖人の道は、本と人に拂らず。然れども亦た人に可なるを求めず。人情は原と限量無し。人に可なるを務むるは惟だ是ならざるのみならず、亦た自ら能はず。故に君子は只だ理に可なるを務む。
-
『呻吟語』外篇・人情・其の人情に拂る者は、乃ち人情に宜しき所以なり聖人の禮を制するは本と以て人情を體するにして、以て之に拂るに非ざるなり。聖人の心は人情の便とする所に因りて各おの之に順はざるに非ず。然れども一時に順ひ一人に便ならば、而して後に天下の大いに順ひ便ならざる者之に因る。故に聖人は敢へて小便を恤みて大順に拂り、一時に徇ひて萬世を弊せず。其の人情に拂る者は、乃ち人情に宜しき所以なり。
-
『呻吟語』内篇・應務・責むるは太だ盡くす可からず人情は天下古今の同じき所なり。聖人は其の肆なるを防ぎ、特に之が為に中を立てて以て之を的とす。故に法を立つるは太だ極む可からず、禮を制するは太だ嚴なる可からず、人を責むるは太だ盡くす可からず。然る後に以て同じく道に歸す可し。然らずんば、是れ之を驅りて畔かしむるなり。
-
『呻吟語』外篇・治道・情に徇ひて法を廢せず情に徇ひて法を廢せず、法を執りて情を病ましめざるは、居官の妙悟なり。聖人は未だ嘗て正を屐み公を奉ぜずんばあらず。其の人に接し事に處するに至りては大段圓融渾厚なり。是を以て法紀失はれずして人も亦た怨まず。何者ぞ。躁急の心無くして一切の術に狃れざればなり。
-
『呻吟語』内篇・應務・人の不得已の情を受けず君子は人の不得已の情を受けず、人の不敢不從の事を苦しめず。
-
『呻吟語』内篇・應務・人の情を悉くし、事の理を悉くす人に處するは己が意に任す可からず、人の情を悉くするを要す。事に處するは己が見に任す可からず、事の理を悉くするを要す。