呻吟語 / 外篇・廣喻・造物の象
發去木一段,造神櫝一,鏡台一,腳桶一。錫五斤,造香爐一,酒壺一,溺器一。(此造物之象也。一段之木,五斤之錫,初無貴賤榮辱之等,賦畀之初無心,而成形之後各殊,造物者亦不知莫之為而為耳。木造物之不還者,貧賤憂慼,當安於有生之初,錫造物之循環者,富貴福澤,莫恃為固有之物。)
新字:発去木一段,造神櫝一,鏡台一,腳桶一。錫五斤,造香炉一,酒壺一,溺器一。(此造物之象也。一段之木,五斤之錫,初無貴賤栄辱之等,賦畀之初無心,而成形之後各殊,造物者亦不知莫之為而為耳。木造物之不還者,貧賤憂慼,当安於有生之初,錫造物之循環者,富貴福沢,莫恃為固有之物。)
書き下し
木一段を發去して、神櫝一、鏡台一、腳桶一を造る。錫五斤にて、香爐一、酒壺一、溺器一を造る。此れ造物の象なり。一段の木、五斤の錫は、初め貴賤榮辱の等無し。賦畀の初め心無くして、形を成すの後に各おの殊なる。造物者も亦た知らず、之を為す莫くして為るのみ。木の造物の還らざる者は、貧賤憂慼なり。當に有生の初めに安んずべし。錫の造物の循環する者は、富貴福澤なり。恃みて固有の物と為す莫かれ。
現代語訳
木を一本送って、神を納める櫃を一つ、鏡台を一つ、足桶を一つ作ります。錫五斤で、香炉を一つ、酒壺を一つ、便器を一つ作ります。これが造物の姿です。一本の木、五斤の錫には、初め貴賤も栄辱の差もありません。与えるときに計らう心が無く、形になった後にそれぞれ異なります。造物主も知らず、するでもなくそうなっただけです。木の造物で戻らないものは、貧賤と憂いです。生まれた初めに安んじるべきです。錫の造物で巡り回るものは、富貴と幸いです。頼りにして自分のものだと思ってはいけません。
解説
同じ材料から、神櫃と足桶、香炉と便器が作られることを示します。材料の段階では貴賤がありません。差は形になった後に生じます。そして二つの材が分けられます。木は溶かし直せないので貧賤と憂いに当たり、生まれの初めに安んじるべき。錫は溶かして作り直せるので富貴と幸いに当たり、自分のものと思うなとされます。境遇の受け取り方が、材の性質で分けられています。
この章句が説くこと
材料形貴賤木錫
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