呻吟語 / 外篇・治道・廝隸の言直ちに九重に徹す
廝隸之言直徹之九重,台省以之為藏否,部院以之為進退,世道大可恨也。或訝之。愚曰:「天子之用舍托之吏部,吏部之賢不肖托之撫按,撫按之耳目托之兩司,兩司之心腹托之守令,守令之見聞托之皂快,皂快之採訪托之他邑別邵之皂快。彼其以恩仇為是非,以謬妄為情實,以前令為後宮,以舊愆為新過,以小失為大辜,密報密收,信如金石;愈偽愈詳,獲如至寶。謂夷、由污,謂蹻、跖廉,往往有之。而撫按據以上聞,吏部據以黜陟。一吏之榮辱不足惜,而奪所愛以失民望,培所恨以滋民殃,好惡拂人甚矣。
新字:廝隸之言直徹之九重,台省以之為蔵否,部院以之為進退,世道大可恨也。或訝之。愚曰:「天子之用舎托之吏部,吏部之賢不肖托之撫按,撫按之耳目托之両司,両司之心腹托之守令,守令之見聞托之皂快,皂快之採訪托之他邑別邵之皂快。彼其以恩仇為是非,以謬妄為情実,以前令為後宮,以旧愆為新過,以小失為大辜,密報密収,信如金石;愈偽愈詳,獲如至宝。謂夷、由汚,謂蹻、跖廉,往往有之。而撫按拠以上聞,吏部拠以黜陟。一吏之栄辱不足惜,而奪所愛以失民望,培所恨以滋民殃,好悪払人甚矣。
書き下し
廝隸の言直ちに之を九重に徹す。台省之を以て藏否と為し、部院之を以て進退と為す。世道大いに恨む可きなり。或るひと之を訝る。愚曰く、「天子の用舍は之を吏部に托し、吏部の賢不肖は之を撫按に托し、撫按の耳目は之を兩司に托し、兩司の心腹は之を守令に托し、守令の見聞は之を皂快に托し、皂快の採訪は之を他邑別邵の皂快に托す。彼の其の恩仇を以て是非と為し、謬妄を以て情實と為し、前令を以て後宮と為し、舊愆を以て新過と為し、小失を以て大辜と為す。密報密收にして、信ずること金石の如し。愈いよ偽にして愈いよ詳しく、獲ること至寶の如し。夷・由を污と謂ひ、蹻・跖を廉と謂ふこと、往往にして之れ有り。而して撫按據りて以て上聞し、吏部據りて以て黜陟す。一吏の榮辱は惜しむに足らずして、愛する所を奪ひて以て民望を失ひ、恨む所を培ひて以て民殃を滋す。好惡人に拂ふこと甚だし」と。
現代語訳
下男や下役の言葉が、そのまま宮中まで届きます。監察の役所はそれで良し悪しを決め、部や院はそれで進退を決めます。世の道は大いに恨むべきです。ある人が怪しみました。私は言う。天子の任免は吏部に託され、吏部の賢愚は地方長官に託され、地方長官の耳目は両司に託され、両司の腹心は郡県の長に託され、郡県の長の見聞は下役に託され、下役の聞き込みは他の町の下役に託されます。彼らは恩と仇で是非を決め、でたらめを事実とし、前任者のことを後任のこととし、古い咎を新しい過ちとし、小さな失敗を大きな罪とします。密かに報告し密かに受け取り、金石のように信じられます。偽りであるほど詳しく、至宝のように扱われます。伯夷や許由を汚いと言い、荘蹻や盗跖を廉潔だと言うことも、しばしばあります。それを地方長官が根拠として上奏し、吏部が根拠として進退を決めます。一人の役人の栄辱は惜しむに足りませんが、愛される者を奪って民の望みを失わせ、恨まれる者を育てて民の災いを増やします。好き嫌いが人の心に背くことがはなはだしい。
解説

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