呻吟語 / 外篇・物理・木死して灰と成るも、其の性自ら在り
柳炭鬆弱無力,見火即盡。榆炭稍強,火稍烈。桑炭強,山栗炭更強。皆逼人而耐久。木死成灰,其性自在。
新字:柳炭鬆弱無力,見火即尽。榆炭稍強,火稍烈。桑炭強,山栗炭更強。皆逼人而耐久。木死成灰,其性自在。
書き下し
柳炭は鬆弱にして力無く、火を見れば即ち盡く。榆炭は稍しく強く、火も稍しく烈し。桑炭は強く、山栗炭は更に強し。皆な人に逼りて久しきに耐ふ。木死して灰と成るも、其の性自ら在り。
現代語訳
柳の炭はもろく弱く力が無く、火に触れればすぐ尽きます。楡の炭は少し強く、火も少し烈しい。桑の炭は強く、山栗の炭はさらに強い。どれも人に迫って長持ちします。木は死んで灰になっても、その性はそのまま在ります。
解説
炭の種類ごとの燃え方を、実際に観察して並べます。柳、楡、桑、山栗の順に強くなります。そして結論が置かれます。木は死んで灰になっても性はそのまま在る。姿が変わっても持って生まれた質は残るということです。具体的な観察から、性の不変という主張へ飛ぶところに、この書の特徴がよく出ています。観察から、性の不変という主張へ飛んでいます。
この章句が説くこと
炭性不変観察灰
関連する章句
-
『呻吟語』内篇・談道・幽に處りて明を燭らすを神照と謂ふ明に處りて幽を燭らせば、未だ物を見る能はずして物先に之を見る。幽に處りて明を燭らす、是れを神照と謂ふ。是の故に言はざる者は喑に非ず、視ざる者は盲に非ず、聽かざる者は聾に非ず。
-
人物志・八觀七に曰く、其の短なる所を観て、以て長なる所を知る。
-
『学問のすゝめ』十二編・演説の法を勧むるの説・視察、推究、読書、談話、著書、演説ゆえに学問の本趣意は読書のみにあらずして、精神の働きにあり。この働きを活用して実地に施すにはさまざまの工夫なかるべからず。オブセルウェーションとは事物を視察することなり。リーゾニングとは事物の道理を推究して自分の説を付くることなり。この二ヵ条にてはもとよりいまだ学問の方便を尽くしたりと言うべからず。なおこのほかに書を読まざるべからず、書を著わさざるべからず、人と談話せざるべからず、人に向かいて言を述べざるべからず、この諸件の術を用い尽くしてはじめて学問を勉強する人と言うべし。すなわち視察、推究、読書はもって智見を集め、談話はもって智見を交易し、著書、演説はもって智見を散ずるの術なり。然りしこうしてこの諸術のうちに、あるいは一人の私をもって能くすべきものありといえども、談話と演説とに至りては必ずしも人とともにせざるを得ず。演説会の要用なることもって知るべきなり。
-
人物志・自序其の安んずる所を察し、其の由る所を觀て、以て居止の行を知る。
-
孫子・行軍篇令素より行われて以て其の民を教うれば、則ち民服す。令素より行われずして以て其の民を教うれば、則ち民服せず。令素より行わるる者は、衆と相得るなり。
-
『呻吟語』内篇・問學・怠惰の時に工夫を看る怠惰の時に工夫を看、脫略の時に點檢を看、喜怒の時に涵養を看、患難の時に力量を看る。