呻吟語 / 内篇・談道・己立たんと欲して人を立つ
已欲立而立人,己欲達而達人,便是肫肫其仁、天下一家滋味。然須推及鳥獸,又推及草木,方充得盡。若父子兄弟間便有各自立達、爭先求勝的念頭,更那顧得別個。
新字:已欲立而立人,己欲達而達人,便是肫肫其仁、天下一家滋味。然須推及鳥獣,又推及草木,方充得尽。若父子兄弟間便有各自立達、争先求勝的念頭,更那顧得別個。
書き下し
己立たんと欲して人を立て、己達せんと欲して人を達するは、便ち是れ肫肫たる其の仁、天下一家の滋味なり。然れども須らく鳥獸に推し及ぼし、又草木に推し及ぼして、方めて充たし得盡くすべし。若し父子兄弟の間に便ち各自立達し、先を爭ひ勝を求むるの念頭有らば、更に那ぞ別個を顧み得ん。
現代語訳
自分が立ちたいと思って人を立て、自分が達したいと思って人を達させる。これこそ懇ろな仁であり、天下が一つの家である味わいです。しかし鳥や獣にまで押し広げ、さらに草や木にまで押し広げて、はじめて満たし尽くせます。もし父子や兄弟のあいだで、それぞれ自分が立ち達しようとして先を争い勝ちを求める思いがあるなら、どうして他の者を顧みられましょうか。
解説
論語の立人達人の句が、二方向に広げられます。外へは鳥獣草木まで、内へは父子兄弟まで。そして内側のほうが厳しく問われます。家族のあいだで先を争っているなら、他人を顧みられるはずがない、と。遠くへ広げる前に、最も近いところで成り立っているかを確かめよという順序で、大きな志の足もとを点検させる一段です。外へ広げる話と、内を点検する話が一つの段に収まっています。
この章句が説くこと
立人達人拡充父子足元
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