呻吟語 / 外篇・品藻・性分・名分は兩項ならず
性分、名分不是兩項,盡性分底不傲名分。召之見,不肯見之;召之役,往執役之事。今之講學者,陵犯名分,自謂高潔。孔子乘田委吏何嘗不折腰屈膝於大夫之庭乎?噫!道不明久矣。
新字:性分、名分不是両項,尽性分底不傲名分。召之見,不肯見之;召之役,往執役之事。今之講学者,陵犯名分,自謂高潔。孔子乗田委吏何嘗不折腰屈膝於大夫之庭乎?噫!道不明久矣。
書き下し
性分・名分は是れ兩項ならず。性分を盡くす底は名分に傲らず。之を召して見えしむれば、見えるを肯んぜず。之を召して役せしむれば、往きて執役の事をす。今の講學する者は、名分を陵犯して自ら高潔と謂ふ。孔子の乘田委吏は何ぞ嘗て大夫の庭に折腰屈膝せざらんや。噫、道の明らかならざること久し。
現代語訳
性としての分と名としての分は、二つの項目ではありません。性分を尽くす者は名分に驕りません。呼びつけて会おうとすれば会おうとせず、呼びつけて使役すれば出向いて務めを果たします。今の学を講じる者は、名分を踏み越えて自分は高潔だと言います。孔子が牧場の役人や倉の役人をしていた時、大夫の庭で腰を折り膝を屈めなかったでしょうか。ああ、道が明らかでなくなって久しい。
解説
性分と名分を、対立するものとしません。性分を尽くす者は名分を軽んじない、と。孟子の、招かれて会うことは拒むが使役には応じたという故事を踏まえます。そして孔子が下級役人として腰を折っていた事実を挙げます。高潔を理由に秩序を踏み越える態度を、実例で封じた一段です。高潔と傲慢の境目を、故事で見分ける形になっています。
この章句が説くこと
性分名分高潔務め孔子
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