呻吟語 / 外篇・治道・其の奮を蓄へて之を逞しからしめず
治世用端人正士,衰世用庸夫俗子,亂世用憤夫佞人。憸夫佞人盛,而英雄豪傑之士不伸。夫惟不伸也,而奮於一伸,遂至於亡天下。故明主在上必先平天下之情,將英雄豪傑服其心志,就我羈掗,不蓄其奮而使之逞。
新字:治世用端人正士,衰世用庸夫俗子,乱世用憤夫佞人。憸夫佞人盛,而英雄豪傑之士不伸。夫惟不伸也,而奮於一伸,遂至於亡天下。故明主在上必先平天下之情,将英雄豪傑服其心志,就我羈掗,不蓄其奮而使之逞。
書き下し
治世は端人正士を用ひ、衰世は庸夫俗子を用ひ、亂世は憤夫佞人を用ふ。憸夫佞人盛んにして、英雄豪傑の士伸びず。夫れ惟だ伸びざるなり、而して一たび伸びんことに奮へば、遂に天下を亡ぼすに至る。故に明主上に在らば必ず先づ天下の情を平らかにし、將に英雄豪傑をして其の心志を服せしめ、我が羈掗に就かしめ、其の奮を蓄へて之を逞しからしめず。
現代語訳
治まった世は端正な士を用い、衰えた世は凡庸な者を用い、乱れた世は憤る者と媚びる者を用います。媚びる者が盛んになれば、英雄豪傑の士は伸びません。伸びないからこそ、ひとたび伸びようと奮い立てば、ついに天下を亡ぼすに至ります。だから明君が上にあれば、必ずまず天下の情を平らかにし、英雄豪傑にその心志を納得させ、自分の手綱に就かせ、その奮いを蓄えさせて暴発させません。
解説
世の段階によって用いられる人が変わると示します。治世は端正な士、衰世は凡庸な者、乱世は憤る者と媚びる者。そして最も危険な事態が描かれます。英雄豪傑が伸びられないまま蓄積し、一度奮い立てば天下を亡ぼす。処方は封じることではなく、納得させて手綱に就かせ、蓄積させないこと。力ある人の扱いを、予防の観点から論じた一段です。
この章句が説くこと
治衰乱英雄蓄積暴発予防
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