呻吟語 / 内篇・存心・此れ萬善の囮なり
一善念發,未說到擴充,且先執持住,此萬善之囮也。若隨來隨去,更不操存此心,如驛傳然,終身無主人住矣。
新字:一善念発,未説到擴充,且先執持住,此万善之囮也。若随来随去,更不操存此心,如駅伝然,終身無主人住矣。
書き下し
一善念發せば、未だ擴充を說くに到らずして、且く先づ執持し住めよ。此れ萬善の囮なり。若し隨ひ來たり隨ひ去りて、更に此の心を操存せざれば、驛傳のごとく然り。身を終ふるまで主人の住むこと無からん。
現代語訳
一つの善い思いが起こったなら、それを押し広げる話をする前に、まずしっかり握って留めておきなさい。これが万の善を呼び寄せるおとりです。もし来るに任せ去るに任せて、この心を保ち留めなければ、宿場のようなものです。生涯、主人が住むことはありません。
解説
善い思いが起きたときの扱いが示されます。すぐ大きくしようとせず、まず握って留めよ、と。それを万の善を呼ぶおとりだと言うのが面白い。一つ留めておけば他が寄ってくるという見方です。留めなければどうなるかも示されます。宿場には次々に人が来るが、誰も住まない。思いが通り過ぎるだけの心を、主人のいない宿にたとえた一句が残ります。
この章句が説くこと
善念把持蓄積駅伝主人
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