呻吟語 / 外篇・治道・小人は只だ他に才有るを怕る
小人只怕他有才,有才以濟之,流害無窮。君子只怕他無才,無才以行之,斯世何補?
新字:小人只怕他有才,有才以済之,流害無窮。君子只怕他無才,無才以行之,斯世何補?
書き下し
小人は只だ他に才有るを怕る。才有りて以て之を濟せば、流害窮まり無し。君子は只だ他に才無きを怕る。才無くして以て之を行はば、斯の世何ぞ補はん。
現代語訳
小人については、ただ才があることを恐れます。才があってそれを遂げれば、害の広がりは尽きません。君子については、ただ才が無いことを恐れます。才が無くて行おうとしても、この世に何の足しになるでしょうか。
解説
才を、それ自体では善悪の無いものとして扱います。小人に才があれば害が尽きず、君子に才が無ければ何の足しにもならない。同じ才が正反対に働くわけです。だから人物を見るときは、徳と才を掛け合わせて考える必要があります。短い対句ですが、徳だけを見る見方も才だけを見る見方も同時に退けた、実務的な一段になっています。
この章句が説くこと
才徳掛け合わせ害無用
関連する章句
-
呂氏春秋・精通③德なる者は、萬民の宰なり。月なる者は、群陰の本なり。月望なれば則ち蚌蛤實ち、群陰盈つ。月晦なれば則ち蚌蛤虚しく、群陰虧く。夫れ月、天に形われて、群陰、淵に化す。聖人、德を己に行いて、四方咸仁に飭し。
-
論語・衛霊公篇子曰く、由、徳を知る者は鮮なし。
-
論語・為政篇子曰く、之を道びくに政を以てし、之を斉(ととの)うるに刑を以てすれば、民免れて恥無し。之を道びくに徳を以てし、之を斉うるに礼を以てすれば、恥有り且つ格(いた)る。
-
論語・憲問篇南宮适、孔子に問いて曰く、「羿は射を善くし、奡は舟を盪かす。倶に其の死を得ざりき。禹・稷は躬ら稼して天下を有てり。」夫子答えず。南宮适出づ。子曰く、「君子なるかな若き人。徳を尚ぶかな若き人。」
-
論語・為政篇子曰く、政を為すに徳を以てすれば、譬えば北辰其の所に居て衆星之に共(むか)うが如し。
-
『墨子』親士是の故に天地は昭昭たらず、大水は潦潦たらず、大火は燎燎たらず、王徳は堯堯たらず。者は乃ち千人の長なり。其の直きこと矢の如く、其の平らかなること砥の如きは、萬物を覆うに足らず。是の故に谿の狹き者は速やかに涸れ、逝の淺き者は速やかに竭き、墝埆なる者は其の地育まず。王者の淳き澤も、宫中を出でざれば、則ち國に流るる能わず。