呻吟語 / 外篇・治道・郡縣は無定の封建
封建自五帝已然,三王明知不便勢與情,不得不用耳。夏繼虞,而諸侯無罪,安得廢之?湯放桀,費征伐者十一國,餘皆服從,安得而廢之?武伐紂,不期而會者八百,其不會者,或遠或不聞,亦在三分有二之數,安得而廢之?使六國尊秦為帝,秦亦不廢六國。緣他不肯服,勢必畢六王而後已。武王興滅繼絕,孔子之繼絕舉廢,亦自其先世曾有功德,及滅之,不以其罪言之耳。非謂六師所移及九族無血食者,必求復其國也。故封建不必是,郡縣不必非。郡縣者,無定之封建;封建者,有定之郡縣也。
新字:封建自五帝已然,三王明知不便勢与情,不得不用耳。夏継虞,而諸侯無罪,安得廃之?湯放桀,費征伐者十一国,余皆服従,安得而廃之?武伐紂,不期而会者八百,其不会者,或遠或不聞,亦在三分有二之数,安得而廃之?使六国尊秦為帝,秦亦不廃六国。縁他不肯服,勢必畢六王而後已。武王興滅継絶,孔子之継絶舉廃,亦自其先世曽有功徳,及滅之,不以其罪言之耳。非謂六師所移及九族無血食者,必求復其国也。故封建不必是,郡県不必非。郡県者,無定之封建;封建者,有定之郡県也。
書き下し
封建は五帝より已に然り。三王は明らかに勢と情とに便ならざるを知るも、用ひざるを得ざるのみ。夏は虞を繼ぐも、諸侯罪無し。安んぞ之を廢するを得ん。湯は桀を放つに、征伐を費やす者十一國、餘は皆な服從す。安んぞ之を廢するを得ん。武は紂を伐つに、期せずして會する者八百、其の會せざる者は、或いは遠く或いは聞かず、亦た三分の二有るの數に在り。安んぞ之を廢するを得ん。六國をして秦を尊びて帝と為さしめば、秦も亦た六國を廢せざらん。他の服するを肯んぜざるに緣り、勢ひ必ず六王を畢へて後に已む。武王の滅を興し絕を繼ぎ、孔子の絕を繼ぎ廢を舉ぐるも、亦た自ら其の先世曾て功德有るに、滅ぶるに及びて、其の罪を以てせざるを之れ言ふのみ。六師の移す所、及び九族の血食する者無きは、必ず其の國を復するを求むと謂ふに非ざるなり。故に封建は必ずしも是ならず、郡縣は必ずしも非ならず。郡縣なる者は、定まり無きの封建なり。封建なる者は、定まり有るの郡縣なり。
現代語訳
封建は五帝の時からすでにそうでした。三王は勢いにも情にも都合がよくないと明らかに知りながら、用いざるを得なかっただけです。夏が虞を継いでも、諸侯に罪はありません。どうして廃せるでしょうか。湯が桀を放つのに征伐を費やしたのは十一国で、残りはみな服従しました。どうして廃せるでしょうか。武王が紂を伐つのに、約束もなく集まったのが八百、集まらなかったのは遠いか聞かなかったからで、これも三分の二のうちに入ります。どうして廃せるでしょうか。六国が秦を尊んで帝としたなら、秦も六国を廃さなかったでしょう。相手が服さなかったから、勢いとして六王を終わらせるほかなかったのです。武王が滅んだ家を興し絶えた家を継ぎ、孔子が絶えた家を継ぎ廃れた家を挙げたのも、その先祖に功徳があったのに、滅ぼすとき罪によらなかったからだと言うだけです。軍が移した先や、九族に血を享ける者が無い家を、必ず復すべきだと言ったのではありません。だから封建が必ず是でもなく、郡県が必ず非でもありません。郡県は定まりの無い封建であり、封建は定まりのある郡県です。
解説
この章句が説くこと
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