呻吟語 / 内篇・談道・至誠の地位に到れば偽も亦た誠なり
到至誠地位,誠固誠,偽亦誠;未到至誠地位,偽固偽,誠亦偽。
書き下し
至誠の地位に到れば、誠は固より誠、偽も亦た誠なり。未だ至誠の地位に到らざれば、偽は固より偽、誠も亦た偽なり。
現代語訳
この上ない誠の位に至れば、誠はもちろん誠であり、偽りもまた誠になります。まだその位に至っていなければ、偽りはもちろん偽りであり、誠もまた偽りになります。
解説
行いの一つ一つではなく、その人がどこに立っているかで真偽が決まるという見方です。土台が誠であれば、取り繕いに見える振る舞いさえ誠から出ている。土台が偽りであれば、誠実に見える行いも結局は偽りになる。誠実さを場面ごとの努力で作ろうとする私たちに、まず立ち位置を問えと迫ります。誤解を招きかねない大胆な言い方ですが、それだけ土台を重く見ているのです。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
誠偽土台位真偽
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・治道・孰か得て之を定めん彼の王や、未だ必ずしも邪謀を以て正謀と為さず、先民の經と為し、大猶の程と為さず。當時朝に在るの臣も、又た安んぞ大夫を邪謀と謂ひ、邇言と謂はざるを知らんや。是の故に兩端を執りて中を用ふるは、必ず聖人の天子の位に在りて、獨斷堅持するなり。必ず聖人の父師の尊に居りて、誠格り意孚するなり。然らずんば人各おの口有り、人各おの心有り。下に在る者は多く指もて視を亂し、上に在る者は疑ひを蓄へて謀を敗る。孰か得て之を禁ぜん。孰か得て之を定めん。
-
言志四録・言志耋録 第三百三十四条 人道は誠敬のみ人道は只だ是れ誠敬のみ。生きては既に生を全うし、死しては乃ち死に安んず。敬よりして誠なり。生死は天より来る、順ひて之を受く。誠よりして敬なり。夫の短長を較べ、苦楽を説くに至りては、則ち竟に是れ男女親族の私情にして、死者に於ては此の遺念無きのみ。
-
『大和俗訓』巻之三・心術上一およそ人の一念の不善も、かならず天に通ずる理あり。天は高きに居て、ひききに聞くといへり。上天を欺くべからず。おそるべし。人をあざむけば、つひに其、偽あらはる。内に誠あれば、必外にあらはるといへり。下人をあざむくべからず。恥づべし。天を欺き、人をあざむくは、共に我が心を欺くによれり。我が心に不善と知りながら、これを行ふ、是自欺なり。我が心あざむくべからず。およそ、天と人と我が心と、皆あざむくべからず。唯一すぢに誠あるべし。ここを以て、君子の心は、つねに青天白日の如くなり。小人の心は、常に陰暗くしてはかりがたし。
-
『慎思録』巻之三程子曰く、吾未だ財に嗇にして、能く善を為す者を見ざるなり。吾未だ誠ならずして、能く善を為す者を見ざるなり、と。愚謂へらく、財は善を為すの実用なり。財を用ひざれば、則ち善虚しくは行はれず。譬へば種植するが如し。灌漑培養の功を用ひざれば、則ち滋潤の益無し。故に財を用ひて後に人其の恵を蒙り、惟善を為すべし。苟も財を用ふるに嗇なれば、則ち項羽の婦人の仁と称せらるるが如く、言語姁姁たりと雖も、人悦服せず。誠は善を為すの本なり。誠無ければ則ち善徒らには行はれず。譬へば樹を種うるに根柢無きが如し。之を培養すと雖も益無し。故に誠有りて後に善人に施すべく、人も亦信服す。苟も誠無ければ、則ち温顔遜辞を以て人に接すと雖も、然れども人得て之を信ぜず。程子の此の言、豈に敢て我を欺かんや。
-
『初学訓』巻之四一およそ、農工商の三民は、君に仕へずして禄なし。みづから利養を求むるを専とす。されど、義理を捨てて利養を求むるは、天道に背き、人事を妨げて、たとひ、一旦の利を得るといへど、必ず天の咎人のにくみ有りて、後の禍にあふ。おろかなるものは、眼前の利をのみ謀りて、後の禍を知らず。不善を行ひて、利をむさぼること小なれば、財を失ふ。甚しければ、家を破り身を亡す。天のせめ人のにくみ遁れがたし、愚なるにあらずや。誠は天の道なり。之を誠にするは、人の道なり。四時行はれ、百物生る。善にさいはひし悪にわざはひす。是天道のまことなり、古今たがはず。人の道は、これを則として、つとめて誠にするにあり。ここをもつて、人の心は誠を主とす。誠あらざれば物なし。君父によく仕へ、いかなる善を行ひても、誠なければ為す事皆ひがごとなり。是を物なしといふ。つとめて善を行ふも、誠なければ、みづから欺き、人を欺くに至る、惜むべし。欺くとは偽るなり。故に、万の事誠を本とすべし。孔子の主忠信とのたまふも、此意なり。忠信は誠の心なり。
-
『弁名』誠又た仁斎先生の無妄と無偽とを以て其の優劣を争ふが如きも、亦た朱子の意は虚妄無きを謂ふのみなるを知らず。其の所謂春当に温かなるべくして反つて寒く、夏当に熱かるべくして反つて冷え、夏に霜ふり、冬に雷なり、桃李華さき、五星逆行し、日月度を失ふの類、豈に虚妄と為すべけんや。東坡の所謂「人は至らざる所無し、惟だ天のみ偽を容れず」とは、其の人の偽を容れざるを謂ふのみ。天の偽らざるを謂ふに非ざるなり。嗚呼、天豈に偽不偽を以て言ふべけんや。是れ其の今言に於いて猶ほ未だ之を知らず。況んや古言に於いてをや。