呻吟語 / 外篇・廣喻・其の取足の多寡に聽す
地以一氣噓萬物,而使之生,而物之受其氣者,早暮不同,則物之性殊也,氣無早暮,夭喬不同,物之體殊也,氣無天喬,甘苦不同,物之味殊也,氣無甘苦,紅白不同,物之色殊也,氣無紅白,榮悴不同,物之稟遇殊也,氣無榮悴。盡吾發育之力,滿物各足之分量;順吾生植之道,聽其取足之多寡,如此而已。聖人之治天下也亦然。
新字:地以一気噓万物,而使之生,而物之受其気者,早暮不同,則物之性殊也,気無早暮,夭喬不同,物之体殊也,気無天喬,甘苦不同,物之味殊也,気無甘苦,紅白不同,物之色殊也,気無紅白,栄悴不同,物之稟遇殊也,気無栄悴。尽吾発育之力,満物各足之分量;順吾生植之道,聴其取足之多寡,如此而已。聖人之治天下也亦然。
書き下し
地は一氣を以て萬物に噓きて、之をして生ぜしむ。而して物の其の氣を受くる者は、早暮同じからざれば、則ち物の性殊なるなり。氣に早暮無し。夭喬同じからざるは、物の體殊なるなり。氣に夭喬無し。甘苦同じからざるは、物の味殊なるなり。氣に甘苦無し。紅白同じからざるは、物の色殊なるなり。氣に紅白無し。榮悴同じからざるは、物の稟遇殊なるなり。氣に榮悴無し。吾が發育の力を盡くし、物の各おの足るの分量を滿たす。吾が生植の道に順ひ、其の取足の多寡に聽す。此の如きのみ。聖人の天下を治むるや亦た然り。
現代語訳
地は一つの気を万物に吹きかけて生じさせます。物がその気を受けるのに早い遅いがあるのは、物の性が違うからです。気に早い遅いはありません。伸びるものと屈むものが違うのは、物の体が違うからです。気に伸び屈みはありません。甘い苦いが違うのは、物の味が違うからです。気に甘い苦いはありません。赤い白いが違うのは、物の色が違うからです。気に赤い白いはありません。栄えるか萎れるかが違うのは、物の受け取り方が違うからです。気に栄え萎れはありません。自分の育てる力を尽くし、物がそれぞれ足りる分量を満たします。自分の生かし植える道に従い、その受け取る量の多少に任せます。それだけです。聖人が天下を治めるのも同じです。
解説
この章句が説くこと
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『呻吟語』外篇・天地・何の氣の生ずる所なれば則ち何の氣に宜し萬物は天地の氣を得て以て生ず。溫に宜しき者有り、微溫に宜しき者有り、太溫に宜しき者有り、溫にして風なるに宜しき者有り、溫にして濕なるに宜しき者有り、溫にして燥なるに宜しき者有り、溫にして時に風き時に濕なるに宜しき者有り。何の氣の生ずる所なれば則ち何の氣に宜し。之を得れば則ち長養し、之を失へば則ち傷病す。
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『呻吟語』外篇・天地・天地位すれば則ち萬物育す氣に一毫の爽有らば、萬物陰かに一毫の病を受く。其の涼に宜しく、寒に宜しく、暑に宜しきも、皆な然らざる無し。飛潛動植、蠛蠓の物も、皆な然らざる無し。故に天地位すれば則ち萬物育し、王道平らかなれば則ち萬民遂ぐ。
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『呻吟語』外篇・天地・不齊に生じて齊に死す天地の氣化は、不齊に生じて、齊に死す。故に萬物は參差、萬事は雜揉たり。勢固より然るのみ、天地も亦た主張し得ず。
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『呻吟語』外篇・廣喻・著味は至味に非ず味を著くるは至味に非ず。故に玄酒は五味の先と為る。色を著くるは至色に非ず。故に太素は五色の主と為る。象を著くるは至象に非ず。故に無象は萬象の母と為る。力を著くるは至力に非ず。故に大塊は萬物を載せて負はず。情を著くるは至情に非ず。故に太清は萬物を生じて親しまず。心を著くるは至心に非ず。故に聖人は萬事に應じて有せず。
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『呻吟語』外篇・廣喻・總て是れ一氣の呼吸天地を知らずんば四時を觀よ。四時を知らずんば萬物を觀よ。四時は分かちて四截と成るも、總て是れ一氣の呼吸なり。譬へば釜水の寒溫熱涼は、火の有無に隨ひて變ず。之を四水と謂ふ可からず。萬物は分かち來たれば是れ萬種なるも、總て來たれば一氣の薰陶なり。譬へば一樹の花の大小後先は、氣の完欠に隨ひて成る。之を殊花と謂ふ可からず。
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『呻吟語』外篇・治道・各おの其の分に安んじ、各おの其の願ひを得聖人上に在れば、能く天下萬物をして各おの其の當然の所に止まり、而して陵奪假借の患ひ無からしむ。夫れ是れを各おの其の分に安んずと謂ひて、天地位す。能く天地萬物をして各おの其の同然の情を遂げ、而して抑鬱倔強の態無からしむ。夫れ是れを各おの其の願ひを得と謂ひて、萬物育す。