呻吟語 / 内篇・存心・天君をして一息も寧泰の處無からしむ
小人終日苦心,無甚受用處。即欲趨利,又欲貪名;即欲掩惡,又欲詐善。虛文浮禮,惟恐其疏略;消沮閉藏,惟恐其敗露。又患得患失,只是求富求貴;畏首畏尾,只是怕事怕人。要之溫飽之外,也只與人一般,何苦自令天君無一息寧泰處?
新字:小人終日苦心,無甚受用処。即欲趨利,又欲貪名;即欲掩悪,又欲詐善。虚文浮礼,惟恐其疏略;消沮閉蔵,惟恐其敗露。又患得患失,只是求富求貴;畏首畏尾,只是怕事怕人。要之温飽之外,也只与人一般,何苦自令天君無一息寧泰処?
書き下し
小人は終日心を苦しむるも、甚の受用する處無し。即ち利に趨らんと欲し、又名を貪らんと欲す。即ち惡を掩はんと欲し、又善を詐らんと欲す。虛文浮禮は、惟だ其の疏略ならんことを恐る。消沮閉藏は、惟だ其の敗露せんことを恐る。又得るを患ひ失ふを患ひ、只だ是れ富を求め貴を求む。首を畏れ尾を畏れ、只だ是れ事を怕れ人を怕る。之を要するに溫飽の外は、也た只だ人と一般なり。何ぞ苦しんで自ら天君をして一息も寧泰の處無からしむるや。
現代語訳
小人は一日じゅう心を苦しめながら、何も受け取って使えるものがありません。利に走ろうとし、同時に名も貪ろうとする。悪を隠そうとし、同時に善を装おうとする。中身のない文と形だけの礼は、手落ちがあることばかり恐れる。しぼんで閉じこもるのは、ばれることばかり恐れるからです。さらに得ることを心配し失うことを心配し、ただ富を求め貴さを求める。頭を恐れ尾を恐れ、ただ事を怖がり人を怖がる。要するに、暖かさと食べ物の外は、人と何も変わりません。どうして苦しんで、自分の心の君に一息の安らぎもない場所を作るのでしょうか。
解説
小人の一日が、苦労の目録として描かれます。利と名の両方を追い、悪を隠しつつ善を装い、手落ちを恐れ、ばれるのを恐れ、得失を心配し、事も人も怖がる。これだけ働いて手に入るのは暖かさと食べ物だけで、それは誰でも同じだ、と。骨折り損の構造を示したうえで、最後は問いになります。なぜわざわざ自分の心を休ませない場所に置くのか、と。
この章句が説くこと
小人苦労名利収支安らぎ
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