呻吟語 / 内篇・應務・有意にして能く掩ふ者無し
只有無跡而生疑,再無有意而能掩者,可不畏哉?
書き下し
只だ跡無くして疑を生ずる有り、再び有意にして能く掩ふ者無し。畏れざる可けんや。
現代語訳
跡が無いのに疑いが生じることはありますが、意図して隠し通せたものはありません。恐れずにいられるでしょうか。
解説
二つの非対称を並べます。無実でも疑われることはあるが、故意に隠したものが隠し通せたことは無い。前者は不運、後者は必然です。だから、疑われることは避けられなくても、隠し事をすれば必ず露見するという結論になります。前に出てきた、埋めてもいずれ明らかになるという段と同じ主張で、こちらは弁明の話と接続しています。疑われるのは避けられないが、隠し事は必ず露見します。
この章句が説くこと
隠蔽露見疑い非対称恐れ
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『呻吟語』内篇・修身・善を彰さずして德を損せず其の善有りて彰るる者は、必ず其の惡有りて掩ふ者なり。君子は善を彰して以て德を損せず、惡を掩ひて以て慝を長ぜず。
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『呻吟語』内篇・修身・一個の真小人を成就す過ちや、人皆な之を見る、乃ち君子を見る。今人過ちの見る可き無し、豈に能く君子より賢ならんや。緣は只だ文飾彌縫の上に在りて工夫を做し、無限の巧回護を費やし盡くして、一個の真小人を成就するに在り。
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『墨子』尚同中今、王公大人の刑政を為すは則ち此を舉ぐ。政、以て便辟を屬し、父兄故舊に宗りて、以て左右と為し、置きて以て正長と為す。民、上の正長を置くの、正しく以て民を治むるに非ざるを知る。是を以て皆な比周隠匿して、肯えて其の上に尚同すること莫し。是の故に上下、義を同じくせず。若し茍くも上下、義を同じくせざれば、賞譽も以て善を勸むるに足らずして、刑罰も以て暴を沮むるに足らず。
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『宋名臣言行録』前集巻三・馬知節真宗の末、王欽若、事を奏する毎に、或いは數奏を懐にして其の一二を出だし、餘は皆な之を匿す。既に退けば、已の意を以て聖㫖と稱して之を行う。嘗て知節と俱に事を上前に奏す。欽若將に退かんとす。知節之を目して曰く、懐中の奏、何ぞ盡く之を出ださざるやと。
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『宋名臣言行録』後集巻九・蘇軾侍讀と爲り、進讀して治亂盛衰・邪正得失の際に至れば、未だ嘗て反覆開導して上に覺悟する所有らんことを覬わずんばあらず。上恭默して言わずと雖も、公の論説する所を聞けば輒ち首を肯じて之を善しとす。嘗て上に侍して祖宗の寶訓を讀み、因りて時事に及ぶ。公歴ミ言う、今賞罰明らかならず、善惡勸沮する所無し。又た夏人鎮戎を寇して殺掠すること幾ど萬人。帥臣掩蔽して以て聞せず。朝廷も亦た問わず。事毎に此くの如くんば恐らくは衰亂の漸を成さんと。
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『宋名臣言行録』前集巻九・余靖本の名は希古。韶州の人。進士に舉げらるるも未だ解薦に預らず。曲江の主薄王仝、喜びて之に遇う。時に韶州を知る者、制科に舉げらる。仝も亦た制科に舉げらる。知州怒りて、以て巳を玩ぶと爲す。其の罪を捃むるに得る所無し。惟だ仝と希古と接坐するを得たり。仝、勅に違うに坐して停任せらる。希古、臋を杖つこと二十。仝、遂に䖍州に閒居して復た仕進せず。希古、名を靖と更め、他州の解を取りて及第す。景祐中、館職と爲る。范文正の爲に寃を訟えて罪を獲たり。是に由りて名を知らる。范公、參政となりて引きて諫官と爲す。祕書丞茹孝標、䘮服未だ除かざるに京に入りて私かに身計を營む。靖、上言す、孝標、哀を冒して仕を求む。不孝なりと。孝標、是に由りて罪を獲て深く靖を恨む。靖、龍圖閣直學士に遷る。王仝、數々書を以て靖に干して貨を求む。靖、其の求めに應ずる能わず。孝標、靖の嘗て刑を犯して詐り匿して應舉するを聞く。乃ち自ら韶州に詣りて其の案を購求して之を得たり。時に錢子飛、諫官と爲り、方に范黨を攻む。孝標、其の事を以て之に語る。子飛、即ち以て聞す。詔して䖍州に下して王仝に問わしむ。靖、隂かに人をして仝に諷して避け去らしむ。仝、貧にして出づる能わずと辭す。靖、銀百兩を茶篚の中に置きて人に託して之に餉る。託する所の者、其の重きを怪しみ、開き視て銀を竊みて茶を仝に致す。仝大いに怒る。詔の州に至るに及び、官、仝に勸む、當日、接坐せし者は余希古なり。今、在る所を知らずと對えよと。仝、從わず。對えて希古は即ち靖なりと稱す。靖、遂に將軍分司を以てす。