呻吟語 / 外篇・聖賢・要は平に歸するのみ
聖人低昂氣化,挽回事勢,如調劑氣血,損其侈不益其強,補其虛不甚其弱,要歸於平而已。不平則偏,偏則病,大偏則大病,小偏則小病。聖人雖欲不平,不可得也。
新字:聖人低昂気化,挽回事勢,如調剤気血,損其侈不益其強,補其虚不甚其弱,要帰於平而已。不平則偏,偏則病,大偏則大病,小偏則小病。聖人雖欲不平,不可得也。
書き下し
聖人の氣化を低昂し、事勢を挽回するは、氣血を調劑するが如し。其の侈を損じて其の強を益さず、其の虛を補ひて其の弱を甚だしくせず。要は平に歸するのみ。平ならざれば則ち偏なり、偏なれば則ち病なり。大いに偏なれば則ち大いに病み、小しく偏なれば則ち小しく病む。聖人平ならざるを欲すと雖も、得可からざるなり。
現代語訳
聖人が気の働きを上げ下げし事の勢いを引き戻すのは、気血を調えるようなものです。過剰を減らしても強い側を増やさず、不足を補っても弱い側をさらに弱めません。要は平らに帰すだけです。平らでなければ偏り、偏れば病です。大きく偏れば大きく病み、小さく偏れば小さく病みます。聖人が平らでないことを望んだとしても、そうはいきません。
解説
統治を、医者の調剤にたとえます。過剰を減らし不足を補うだけで、どちらかを増やしたり減らしたりはしません。目的は平らに戻すことだけ。そして偏りの度合いと病の重さが比例するとされます。改革を、新しいものを加える作業ではなく釣り合いの回復として捉えた一段になっています。改革を、釣り合いの回復として捉えた一段です。
この章句が説くこと
調剤平偏り病回復
関連する章句
-
『呻吟語』外篇・聖賢・山を夷し海を填むるに非ず聖人の天下を平らかにするは、是れ山を夷し海を填むるに非ず。一寸高ければ還た他に一寸し、一分低ければ還た他に一分す。
-
『呻吟語』外篇・治道・平らかなれば則ち安し天下の聖人に望む所は、只だ是れ個の安の字なり。聖人の天下を安んずる所以は、只だ是れ個の平の字なり。平らかなれば則ち安く、平らかならざれば則ち安からず。
-
『呻吟語』外篇・廣喻・疾を醫するに何を以てす玄奇の疾は、醫するに平易を以てす。英發の疾は、醫するに深沉を以てす。闊大の疾は、醫するに充實を以てす。
-
『呻吟語』内篇・存心・當然の願ひを足して過分の欲を裁す人情に當然の願ひ有り、過分の欲有り。聖王なる者は、其の當然の願ひを足して其の過分の欲を裁す、以て相苦しむるに非ざるなり。天地の間の欲願は只だ此の數有るのみ。此に餘り有りて彼に足らざれば、聖王調劑して之を均釐し、其の過分なる者を裁して以て其の當然なる者を益す。夫れ是れを至平と謂ふ。而して人に淫情無く、觖望無し。
-
『呻吟語』外篇・治道・平なる者は聖人の公なり法平靜に至れり。君子又た之に加ふるに恕を以てす。乃ち知る、平なる者は、聖人の公なり。
-
『呻吟語』内篇・修身・未行の審らかなるに若かず玄奇の疾は、醫するに平易を以てす。英發の疾は、醫するに深沉を以てす。闊大の疾は、醫するに充實を以てす。遠からずして復るは、未だ行かざるの審らかなるに若かず。