呻吟語 / 内篇・存心・大利も小義に換へず
大利不換小義,況以小利壞大義乎?貪者可以戒矣。
新字:大利不換小義,況以小利壊大義乎?貪者可以戒矣。
書き下し
大利も小義に換へず、況んや小利を以て大義を壞るをや。貪る者は以て戒む可し。
現代語訳
大きな利益であっても小さな義とは取り替えません。まして小さな利益で大きな義を壊すなど、言うまでもありません。貪る者はこれを戒めとすべきです。
解説
利と義の交換が二段で断たれます。大きな利でも小さな義とは換えない。この時点で交換そのものが成立しないのですから、小さな利で大きな義を壊すのは論外になります。比較の形をとりながら、実は比較不能だと示す論法です。二十三字で、天秤に載せてはいけないものがあるという原則を言い切っています。秤に載せた時点で負けている、という感覚を持てるかどうかが分かれ目になります。
この章句が説くこと
利義交換比較戒め
関連する章句
-
司馬法・仁本義を争いて利を争わず、是を以てその義を明らかにするなり。
-
呂氏春秋・無義①先王の論に於けるや之を極せり。故に義は百事の始めなり、萬利の本なり、中智の及ばざる所なり。及ばざれば則ち知らず、知らざれば利に趨る。利に趨れば固より必す可からざるなり。公孫鞅・鄭平・續經・公孫竭は是れのみ。義を以て動けば則ち曠事無し。人臣、人臣と謀りて姦を為せば、猶ほ之に與するもの或り。又況んや人主、其の臣と謀りて義を為すをや。其れ孰か與せざる者あらんや。獨り其の臣のみに非ざるなり。天下皆且に之に與せんとす。
-
呂氏春秋・召類②凡そ兵の用うるや、利に用い、義に用う。亂を攻むれば則ち服し、服すれば則ち攻むる者利あり。亂を攻むるは則ち義なり。義なれば則ち攻むる者榮あり。榮にして且つ利なれば、中主猶ほ且つ之を為す。有た況んや賢主に於いてをや。故に割地、寶器戈劍、卑辭屈服は、以て攻を止むるに足らず、唯だ治のみ足れりと為す。治まれば則ち利の為にする者は攻めず、名の為にする者は伐たず。凡そ人の攻伐するや、利の為に非ざれば則ち固より名の為なり。名實得ざれば、,國彊大なりと雖も、則ち攻むるを為すこと無し。
-
『墨子』經上故は、得て而る後に成る所なり。止は、久を以てなり。體は、兼に分かるるなり。必は、已まざるなり。知は、材なり。平は、髙さを同じくするなり。慮は、求むるなり。同は、長さ、缶を以て相い盡くすなり。知は、接するなり。中は、長さを同じくするなり。眀なり。厚は、大なる所有るなり。仁は、體として愛するなり。日中は、缶南なり。義は、利なり。直は、參なり。禮は、敬なり。圜は、一中にして長さを同じくするなり。行は、為すなり。方は、柱隅、四つながら讙しきなり。實は、榮なり。倍は、二と為すなり。忠は、以て利を為して强く低るるなり。端は、體の序無くして最も前なる者なり。孝は、親を利するなり。問有るは、中なり。
-
呂氏春秋・愼行①行は孰せざる可からず。孰せざれば、深谿に赴くが如く、悔ゆと雖も及ぶ無し。君子は行を計りて義を慮り、小人は行を計りて利を其するも、乃ち利ならず。不利の利を知る者有れば、則ち與に理を言う可し。
-
荀子・栄辱篇栄辱の大分、安危利害の常体。義を先にして利を後にする者は栄え、利を先にして義を後にする者は辱めらる。栄うる者は常に通じ、辱めらるる者は常に窮す。通ずる者は常に人を制し、窮する者は常に人に制せらる。是れ栄辱の大分なり。材愨(ざいかく)なる者は常に安利、蕩悍(とうかん)なる者は常に危害。安利なる者は常に楽易(らくい)、危害なる者は常に憂険(ゆうけん)。楽易なる者は常に寿長、憂険なる者は常に夭折す。是れ安危利害の常体なり。