呻吟語 / 内篇・談道・泰極まれば則ち肆なり
只泰了,天地萬物皆志暢意得,欣喜歡愛。心身家國天下無一毫鬱閼不平之氣,所謂八達四通,千昌萬遂,太和之至也。然泰極則肆,肆則不可收拾;而入於否。故《泰》之後繼以《大壯》,而聖人戒之曰:「君子以非禮弗履。」用是見古人憂勤惕勵之意多,豪雄曠達之心少。六十四卦,惟有《泰》是快樂時又恁極中極正,且懼且危,此所以致泰保泰而無意外之患也。
新字:只泰了,天地万物皆志暢意得,欣喜歓愛。心身家国天下無一毫鬱閼不平之気,所謂八達四通,千昌万遂,太和之至也。然泰極則肆,肆則不可収拾;而入於否。故《泰》之後継以《大壮》,而聖人戒之曰:「君子以非礼弗履。」用是見古人憂勤惕勵之意多,豪雄曠達之心少。六十四卦,惟有《泰》是快楽時又恁極中極正,且懼且危,此所以致泰保泰而無意外之患也。
書き下し
只だ泰なれば、天地萬物皆な志暢び意得て、欣喜歡愛す。心身家國天下に一毫の鬱閼不平の氣無し。所謂る八達四通、千昌萬遂、太和の至りなり。然れども泰極まれば則ち肆なり、肆なれば則ち收拾す可からずして否に入る。故に《泰》の後に繼ぐに《大壯》を以てし、聖人之を戒めて曰く、「君子は以て禮に非ざれば履まず」と。六十四卦、惟だ《泰》のみ是れ快樂の時に又た恁く極中極正にして、且つ懼れ且つ危ぶむ。此れ泰を致し泰を保ちて意外の患ひ無き所以なり。
現代語訳
泰の卦の通りであれば、天地万物はみな志が伸びて心が満ち、喜び合います。心も身も家も国も天下も、わずかな滞りも不平の気もありません。これが四方八方に通じ、万事が栄え遂げる、和の極みです。しかし泰が極まれば勝手になり、勝手になれば収拾がつかず否に落ちます。だから泰の後に大壮を置き、聖人は戒めて、君子は礼でなければ踏まないと言いました。六十四卦のうち泰だけが、快楽の時にあってこれほど中正でありながら、なお恐れ危ぶんでいます。だからこそ泰を招き、泰を保ち、思いがけない災いが無いのです。
解説
うまくいっている時の卦である泰が、快楽の只中で恐れ危ぶんでいることに呂坤は目を留めます。順調なときに手綱を握れるかどうかが、その順調を保てるかどうかを決める。しかもその手綱は礼という日常の作法です。前の段が富や地位を災いと呼んだのに続けて、ここでは好調そのものの扱い方が語られています。好調のときこそ恐れる、という姿勢が全体を貫いています。
この章句が説くこと
泰好調驕り礼持続
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