呻吟語 / 外篇・物理・古今の載藉
古今載藉,莫濫於今日。括之有九:有全書,有要書,有贅書,有經世之書,有益人之書,有無用之書,有病道之書,有雜道之書,有敗俗之書。《十三經注疏》,《二十一史》,此謂全書。
新字:古今載藉,莫濫於今日。括之有九:有全書,有要書,有贅書,有経世之書,有益人之書,有無用之書,有病道之書,有雑道之書,有敗俗之書。《十三経注疏》,《二十一史》,此謂全書。
書き下し
古今の載藉は、今日より濫なるは莫し。之を括るに九有り。全書有り、要書有り、贅書有り、經世の書有り、益人の書有り、無用の書有り、病道の書有り、雜道の書有り、敗俗の書有り。『十三經注疏』、『二十一史』、此れを全書と謂ふ。
現代語訳
古今の書物は、今日ほど濫れたことはありません。括れば九つあります。全書、要書、贅書、世を経める書、人を益する書、無用の書、道を病ませる書、道を雑ぜる書、俗を敗る書です。十三経注疏と二十一史、これを全書と言います。
解説
書物を九種類に分類する試みです。まず今日ほど濫れたことはないという前提が置かれます。そして九つの名が挙げられ、最初の全書だけが具体例とともに示されます。十三経注疏と二十一史、つまり基本の全集です。次の段で残りの分類が説明されます。読むものを選ぶための物差しを作ろうという、実際的な動機が見える一段です。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
書物九分類全書濫物差し
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『呻吟語』外篇・物理・敗俗の書或いは其の要領を撮み、或いは其の雋腴を類す。『四書』、『六經集注』、『通簽』の類の如し。此れを要書と謂ふ。時務に當たり、機宜に中り、之を用ひて物阜かに民安く、功成り事濟る。此れを經世の書と謂ふ。言は理に近しと雖も、陳言を掇拾して、以て經史を羽翼するに足らず、是れを贅書と謂ふ。醫技農卜、生を養ひ患ひを防ぎ、善を勸め惡を懲らす、是れを益人の書と謂ふ。天下國家に關はる無く、身心性命に益無く、語は心に根ざさず、言は皆な世に應じて、當世の務めを妨ぐ、是れを無用の書と謂ふ。又た贅に如かざるは佛老莊列、是れを病道の書と謂ふ。迂儒の腐說、賢智の偏言、是れを雜道の書と謂ふ。淫邪幻誕、機械誇張、是れを敗俗の書と謂ふ。世道の責有る者、毅然として沙汰して之を芟鋤せずんば、其の世教人心の害為るや小さからず。
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『呻吟語』内篇・問學・邪妄の書は之を焚く可し道理の書は盡く讀み、事務の書は多く讀み、文章の書は少しく讀み、閒雜の書は讀む休め、邪妄の書は之を焚くも可なり。
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『呻吟語』内篇・問學・一二語も受用し盡くさず聖人の千言萬語、經史の千帙萬卷は、都て是れ人に好きを學ばしめ、人の非を為すを禁ずるなり。若し先哲を以て依歸と為し、前言を以て律令と為さば、即ち一二語も受用し盡くさず。若し依舊として世上の人と作り、或いは更に污下ならば、即ち蒼頡以來の書を將て讀み盡くすも、也た只だ是れ個の學問無き底の人なり。
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『呻吟語』外篇・詞章・天分語と性分語古今の載籍の言は率ね七種有り。一に曰く天分語。身は道の為に鑄られ、心は是れ理の成せるもの。自然にして然り、毫も為す所無し。生知安行の聖人なり。二に曰く性分語。理は當に然るべき所、職は當に盡くすべき所。務めて分量を滿たし、斃れて後に已む。學知利行の聖人なり。
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『翁問答』下卷之本体充曰、唐土よりわたりたる書物際限なし、かたはし皆よまでかなはぬ事にて候や。師の曰、それはおほきなる心得そこなひなり、よまでかなはぬといふ書物は、十三経の事なり、十三経のとりいりのはしごになるべき名儒の書或は七書などの外の書物はよみて益なし、然るをつとめよみぬるは、目たるく心つかるゝあだ事なりと思ふべし、史書は古今の事変を考へ、福善禍淫の印証とするものなれば余力のなぐさみに読むものなりと知べし。体充曰、十三経はなになににて候や。師の曰、孝経、論語、孟子、周易、尚書、儀礼、周礼、詩経、礼記、左伝、穀梁伝、公羊伝、爾雅、以上十三部を十三経と定めたり。
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『翁問答』改訂翁問答(丁亥春)問曰、唐土より渡りたる書物際限なし、かたはしみなきかでかなはぬ事にや。答曰、それは大なる心得そこなひなり、きかでかなはぬ書物は十三経なり、十三経の取入のはしごに成べき名儒の書、七書などの外よみて益なし、然るにつとめて読ぬるはめたるく心つかるゝあだごとなり、史書は古今の事変を考へ、福善禍淫の印証とするものなれば、余力のなぐさみに読ものなりとしるべし。問曰、十三経とは何ぞや。答曰、孝経、論語孟子、周易、尚書周礼。儀礼、詩経、礼記、左伝穀梁伝、公羊伝、爾雅以上十三部を十三経とさだめたり。