呻吟語 / 外篇・品藻・酒漢の人を毆つが如し
無根本底氣節,如酒漢毆人,醉時勇,醒時索然無分毫氣力。無學問底識見,如庖人煬灶,面前明,背後左右無一些照顧,而無知者賞其一時,惑其一偏,每擊節歎服,信以終身。
新字:無根本底気節,如酒漢殴人,酔時勇,醒時索然無分毫気力。無学問底識見,如庖人煬灶,面前明,背後左右無一些照顧,而無知者賞其一時,惑其一偏,毎擊節嘆服,信以終身。
書き下し
根本無き底の氣節は、酒漢の人を毆つが如し。醉ふ時は勇なるも、醒むる時は索然として分毫の氣力無し。學問無き底の識見は、庖人の灶を煬るが如し。面前は明らかなるも、背後左右は一些の照顧無し。而して知る無き者は其の一時を賞し、其の一偏に惑ひ、每に節を擊ちて歎服し、信じて以て身を終ふ。
現代語訳
根の無い気節は、酔った男が人を殴るようなものです。酔っているうちは勇ましいが、醒めればしぼんで毛ほどの力もありません。学問の無い識見は、料理人がかまどを焚くようなものです。目の前は明るいが、背後も左右もまるで照らしません。それを知らない者は、その一時を称え、その一方だけに惑わされ、いつも手を打って感嘆し、生涯それを信じ込みます。
解説
根の無い気節と学問の無い識見を、二つの像で描きます。酔った勇気と、かまどの前だけの明るさ。どちらも一時的で、範囲が限られています。そして周りの人がそれに惑わされ、生涯信じ込むと続きます。惑わされる側まで描くことで、こうした人物が力を持つ仕組みが示された一段です。惑わされる側まで描くことで、こうした人物が力を持つ仕組みが見えます。
この章句が説くこと
根気節識見一時惑わす
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