呻吟語 / 内篇・應務・恕の一字に盡くすに足らざる者有り
處世只一恕字,可謂以已及人,視人猶己矣。然有不足以 盡者。天下之事,有已所不欲而人欲者,有己所欲而人不欲者。
新字:処世只一恕字,可謂以已及人,視人猶己矣。然有不足以 尽者。天下之事,有已所不欲而人欲者,有己所欲而人不欲者。
書き下し
世に處するは只だ一の恕の字なり。已を以て人に及ぼし、人を視ること己のごとしと謂ふ可し。然れども以て盡くすに足らざる者有り。天下の事は、已の欲せずして人の欲する者有り、己の欲して人の欲せざる者有り。
現代語訳
世を渡るにはただ恕の一字です。自分を人に及ぼし、人を自分のように見ると言えます。しかしそれでは尽くしきれないところがあります。天下の事には、自分が欲しないのに人が欲するものがあり、自分が欲するのに人が欲しないものがあります。
解説
恕を処世の要としながら、その限界を指摘します。自分を基準にする以上、自分と好みの違う相手には当たらない。自分が嫌なものを相手が喜ぶ場合、恕は逆に働きます。思いやりの限界を、好悪の違いという具体で示した一段で、次の段へ問いを残す形になっています。思いやりの限界を、好悪の違いという具体で示しています。自分を基準にする以上、誤差が必ず残るのです。

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本の中身を見るこの章句が説くこと
恕限界好悪基準思いやり
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