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呻吟語 / 外篇・治道・後世の文法省かずんば世終に治まらず

治道之衰,起於文法之盛;弊蠹之滋,始於簿書之繁。彼所謂文法簿書者,不但經生黔首懵不見聞,即有司專職,亦未嘗檢閱校勘。何者?千宗百架,鼠蠹雨浥,或一事反覆異同,或一時互有可否。後欲遵守,何所適從?只為積年老猾媒利巿權之資耳,其實於事體無裨,弊蠹無損也。嗚呼!百家之言不火而道終不明,後世之文法不省而世終不治。

新字:治道之衰,起於文法之盛;弊蠹之滋,始於簿書之繁。彼所謂文法簿書者,不但経生黔首懵不見聞,即有司専職,亦未嘗検閱校勘。何者?千宗百架,鼠蠹雨浥,或一事反覆異同,或一時互有可否。後欲遵守,何所適従?只為積年老猾媒利巿権之資耳,其実於事体無裨,弊蠹無損也。嗚呼!百家之言不火而道終不明,後世之文法不省而世終不治。

書き下し

治道の衰へは、文法の盛んなるに起こる。弊蠹の滋るは、簿書の繁きに始まる。彼の所謂文法簿書なる者は、但だ經生黔首の懵として見聞せざるのみならず、即ち有司の專職も、亦た未だ嘗て檢閱校勘せず。何者ぞ。千宗百架、鼠蠹雨浥し、或いは一事反覆して異同あり、或いは一時互ひに可否有り。後に遵守せんと欲するも、何ぞ適從する所あらん。只だ積年の老猾の利を媒し權を巿るの資と為るのみ。其の實事體に裨無く、弊蠹に損無きなり。嗚呼、百家の言火せずんば道終に明らかならず、後世の文法省かずんば世終に治まらず。

現代語訳

治める道の衰えは、文と法が盛んになることから起こります。弊害と虫食いが増えるのは、帳簿が繁雑になることから始まります。そのいわゆる文と法や帳簿は、書生や庶民が知らないだけでなく、担当の役人でさえ検閲も校合もしません。なぜか。千の分類と百の書架が、鼠と虫に食われ雨に湿り、一つの事が繰り返されて食い違い、同じ時に賛否が並んでいます。後から従おうとしても、どれに従えばよいでしょうか。ただ長年の老獪な者が利を媒し権を売る材料になるだけです。実際には事の本体に足しにならず、弊害を減らしもしません。ああ、百家の言を焼かなければ道は明らかにならず、後の世の文と法を省かなければ世は治まりません。

解説

文書の繁雑さを、治の衰えの原因とします。誰も読まない文書が、鼠と虫に食われながら積み上がる。一つの事で食い違い、同じ時期に賛否が並ぶので、従いようがありません。そして残る効用が一つだけ示されます。老獪な者が利と権を売る材料。文書が多いほど、解釈できる者の力が増すという構図です。減らすことが治の条件だと結ばれます。

この章句が説くこと

文法簿書繁雑老獪削減

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