呻吟語 / 内篇・應務・聖人は只だ一種の才有り
聖人只有一種才,千通萬貫隨事合宜,譬如富貴只積一種錢,貿易百貨都得。眾人之材如貨,輕縠雖美,不可禦寒;輕裘雖溫,不可當暑。又養才要有根本,則隨遇不窮;運才要有機括,故隨感不滯;持才要有涵蓄,故隨事不敗。
新字:聖人只有一種才,千通万貫随事合宜,譬如富貴只積一種銭,貿易百貨都得。眾人之材如貨,軽縠雖美,不可禦寒;軽裘雖温,不可当暑。又養才要有根本,則随遇不窮;運才要有機括,故随感不滞;持才要有涵蓄,故随事不敗。
書き下し
聖人は只だ一種の才有り、千通萬貫して事に隨ひて宜しきに合ふ。譬へば富貴は只だ一種の錢を積み、百貨を貿易するも都て得。眾人の材は貨の如し。輕縠は美なりと雖も、寒を禦ぐ可からず。輕裘は溫かなりと雖も、暑に當たる可からず。又た才を養ふには根本有るを要す、則ち遇に隨ひて窮まらず。才を運らすには機括有るを要す、故に感に隨ひて滯らず。才を持するには涵蓄有るを要す、故に事に隨ひて敗れず。
現代語訳
聖人にはただ一種の才があり、それが千にも万にも通じて、事に応じてふさわしさに合います。たとえれば、富める者はただ一種の銭を貯めておいて、あらゆる品を買えるようなものです。大勢の人の才は品物のようです。薄絹は美しくても寒さを防げず、軽い皮衣は温かくても暑さには当たりません。さらに才を養うには根本が要り、そうすれば出会いに応じて尽きません。才を運らすには仕掛けが要り、だから感じたところで滞りません。才を持つには蓄えが要り、だから事ごとに敗れません。
解説
才を銭と品物にたとえます。一種の銭はあらゆる品に換えられるが、品物は用途が限られる。だから多芸であることより、通用する一つを持つほうが強いという主張です。そして才の扱いが三つ示されます。養うには根本、運らすには仕掛け、持つには蓄え。才能論を、通貨の比喩で明快に整理した一段になっています。才能論を、通貨の比喩で明快に整理した一段です。
この章句が説くこと
才通用銭根本蓄え
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