呻吟語 / 外篇・治道・便ならざらしむ可からず
民情不可使不便,不可使甚使。不便則壅閼而不通,甚者令之不行,必潰決而不可收拾;甚便則縱肆而不檢,甚者法不能制,必放溢而不敢約束。故聖人同其好惡,以休其必至之情,納之禮法,以防其不可長之漸。故能相安相習,而不至於為亂。
新字:民情不可使不便,不可使甚使。不便則壅閼而不通,甚者令之不行,必潰決而不可収拾;甚便則縦肆而不検,甚者法不能制,必放溢而不敢約束。故聖人同其好悪,以休其必至之情,納之礼法,以防其不可長之漸。故能相安相習,而不至於為乱。
書き下し
民情は便ならざらしむ可からず、甚だしく便ならしむ可からず。便ならざれば則ち壅閼して通ぜず。甚だしき者は之を令するも行はれず、必ず潰決して收拾す可からず。甚だ便なれば則ち縱肆して檢せず。甚だしき者は法制する能はず、必ず放溢して敢へて約束せず。故に聖人は其の好惡を同じくし、以て其の必至の情を休め、之を禮法に納れ、以て其の長ず可からざるの漸を防ぐ。故に能く相ひ安んじ相ひ習ひて、亂を為すに至らず。
現代語訳
民の情は都合が悪いままにしてはならず、都合をよくしすぎてもいけません。都合が悪ければ塞がって通じません。ひどい場合は命じても行われず、必ず堤が切れて収拾がつきません。都合がよすぎれば放縦になって慎みません。ひどい場合は法で制することができず、必ず溢れて縛れません。だから聖人はその好き嫌いを同じくして、必ずそうなる情を休ませ、礼法に収めて、伸びてはならない兆しを防ぎます。だから互いに安んじ互いに慣れて、乱れるに至りません。
解説
民の情に、両側の限界を設けます。都合が悪すぎれば塞がって決壊し、よすぎれば放縦になって溢れる。どちらも水の比喩で語られているのが特徴です。そして聖人の手立てが示されます。好き嫌いを同じくして情を休ませ、礼法に収めて兆しを防ぐ。抑えるのではなく、通しつつ収める形になっています。前に出てきた、溢れを慎む道という段と同じ構えです。
この章句が説くこと
民情両限界決壊放縦礼法
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