呻吟語 / 外篇・治道・職業を問へば舉げて是れ譽文濫套
做上官底只是要尊重,迎送欲遠,稱呼欲尊,拜跪欲恭,供具欲麗,酒席欲豐,騶從欲都,伺候欲謹。行部所至,萬人負累,千家愁苦,即使於地方有益,蒼生所損已多。及問其職業,舉是譽文濫套,縱虎狼之吏胥騷擾傳郵,重瑣尾之文移督繩郡懸,括奇異之貨幣交結要津,習圓軟之容辭網羅聲譽。至生民疾苦,若聾瞽然。豈不驟貴躐遷,然而顯負君恩,陰觸天怒,吾黨恥之。
新字:做上官底只是要尊重,迎送欲遠,称呼欲尊,拝跪欲恭,供具欲麗,酒席欲豊,騶従欲都,伺候欲謹。行部所至,万人負累,千家愁苦,即使於地方有益,蒼生所損已多。及問其職業,舉是誉文濫套,縦虎狼之吏胥騷擾伝郵,重瑣尾之文移督縄郡懸,括奇異之貨幣交結要津,習円軟之容辞網羅声誉。至生民疾苦,若聾瞽然。豈不驟貴躐遷,然而顕負君恩,陰触天怒,吾党恥之。
書き下し
上官を做す底は只だ是れ尊重を要す。迎送は遠からんことを欲し、稱呼は尊からんことを欲し、拜跪は恭ならんことを欲し、供具は麗しからんことを欲し、酒席は豐かならんことを欲し、騶從は都からんことを欲し、伺候は謹まんことを欲す。部を行きて至る所、萬人負累し、千家愁苦す。即使ひ地方に益有るとも、蒼生の損ふ所已に多し。其の職業を問ふに及べば、舉げて是れ譽文濫套なり。虎狼の吏胥を縱にして傳郵を騷擾し、瑣尾の文移を重ねて郡懸を督繩し、奇異の貨幣を括りて要津に交結し、圓軟の容辭を習ひて聲譽を網羅す。生民の疾苦に至りては、聾瞽の若く然り。豈に驟かに貴く躐ち遷らざらんや。然り而して顯に君恩に負き、陰に天怒に觸る。吾が黨之を恥づ。
現代語訳
上官を務める者は、ただ尊重されることばかり求めます。出迎えと見送りは遠くまで、呼び名は尊く、拝礼は恭しく、供え物は美しく、酒席は豊かに、供回りは立派に、伺候は謹んでほしいと望みます。管内を回れば行く先々で万人が負担を負い、千の家が苦しみます。たとえ地方に益があっても、民の損なわれるほうがすでに多い。その職務を問えば、すべて誉め文句の濫用と型どおりです。虎狼のような下役を放って宿駅を騒がせ、細かな文書を重ねて郡県を督促し、珍しい品を集めて要路と結び、円やかで柔らかな物腰を習って評判を集めます。民の苦しみについては、聾や盲のようです。急に貴くなり飛び越えて昇進しないでしょうか。それでいて表では君の恩に背き、陰では天の怒りに触れています。我らはこれを恥じます。
解説

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