呻吟語 / 内篇・存心・門は盡日開闔すれども、樞は常に靜なり
靜之一字,十二時離不了,一刻才離,便亂了。門盡日開闔,樞常靜;妍媸盡日往來,鏡常靜;人盡日應酬,心常靜。惟靜也,故能張主得動,若逐動而去,應事定不分曉。便是睡時,此念不靜,作個夢兒也胡亂。
新字:静之一字,十二時離不了,一刻才離,便乱了。門尽日開闔,枢常静;妍媸尽日往来,鏡常静;人尽日応酬,心常静。惟静也,故能張主得動,若逐動而去,応事定不分暁。便是睡時,此念不静,作個夢児也胡乱。
書き下し
靜の一字、十二時離れ了らず。一刻才かに離るれば、便ち亂る。門は盡日開闔すれども、樞は常に靜なり。妍媸は盡日往來すれども、鏡は常に靜なり。人は盡日應酬すれども、心は常に靜なり。惟だ靜なるが故に、能く動を張主し得。若し動を逐ひて去らば、事に應ずるに定めて分曉ならず。便ち是れ睡る時も、此の念靜ならざれば、個の夢兒を作すも亦た胡亂なり。
現代語訳
静という一字は、一日中離れることがありません。一刻でも離れれば、すぐに乱れます。門は一日じゅう開いたり閉じたりしますが、軸は常に静かです。美しい顔も醜い顔も一日じゅう行き来しますが、鏡は常に静かです。人は一日じゅう応対しますが、心は常に静かです。ただ静かであるからこそ、動を取り仕切ることができます。もし動につられて行ってしまえば、事に応じてもきっとはっきりしません。眠っているときでさえ、この思いが静かでなければ、見る夢までがでたらめになります。
解説
門の軸と鏡という二つの例で、静と動の関係が示されます。門扉は動き続けても軸は動かず、鏡の前を顔が行き交っても鏡は動かない。動かない中心があるから、動きが成り立つという構造です。そして結論が置かれます。静かだからこそ動を取り仕切れる。最後に眠りまで話が及ぶのが面白く、日中の心の状態が夢の質まで決めると言われています。

人生を、一行の式にしてみた。
志×積×時×憤÷(1+執)+命。古典から導いた式『人生の方程式』と、二十四の悩みに古典が答える『人生の教科書』(PDF)、師導の全機能1か月がセットで700円です。
本の中身を見るこの章句が説くこと
静軸鏡中心統御
関連する章句
-
『慎思録』巻之一水静かなれば則ち清明にして鬚眉を燭らす。其の平らかなること准に中る。大匠法を取る。人心静かにして而る後に能く慮る。慮りて而る後に能く得。蓋し能く慮るとは、明の生ずる所なり。能く得るとは、即ち知り得るなり。故に静かなるに非ざれば則ち明を生ずること能はず。
-
『呻吟語』内篇・談道・靜中に天地萬物を看れば都て些子無し靜中に天地萬物を看れば都て些子無し。
-
『呻吟語』内篇・應務・停蓄の水は一決して禦ぐ可からず簡靜沉默の人の發用し出で來たるは當たる可からず。故に停蓄の水は一たび決すれば禦ぐ可からざるなり。蟄處の物は其の毒當たる可からざるなり。潛伏の獸は一たび猛なれば禁ず可からざるなり。輕泄驟舉は、暴雨疾風のみ。智者は懼れず。
-
『呻吟語』内篇・存心・靜者は生門、躁者は死戶靜者は生門、躁者は死戶なり。
-
『呻吟語』内篇・談道・三氏傳心の要法は靜の一字三氏傳心の要法は、之を總ぶるに「靜」の一字を離れず。下手の處は皆な是れ欲を制し、歸宿の處は都て是れ無欲なり。是れ則ち同じ。
-
『呻吟語』内篇・問學・萬病は只だ個の靜の字學者の萬病は、只だ個の靜の字のみ治し得る。