呻吟語 / 外篇・治道・其の應に得べき所を寬くす
法之立也,體其必至之情,寬以自生之路,而後繩其逾分之私,則上有直色而下無心言。今也小官之俸不足供饔飧,偶受常例而輒以貪法罷之,是小官終不可設也。識體者欲廣其公而閉之私,而當事者又計其私,某常例、某從來也。夫寬其所應得而後罪其不義之取,與夫因有不義之取也遂儉於應得焉孰是?蓋倉官月糧一石而驛丞俸金歲七兩云。
新字:法之立也,体其必至之情,寛以自生之路,而後縄其逾分之私,則上有直色而下無心言。今也小官之俸不足供饔飧,偶受常例而輒以貪法罷之,是小官終不可設也。識体者欲広其公而閉之私,而当事者又計其私,某常例、某従来也。夫寛其所応得而後罪其不義之取,与夫因有不義之取也遂倹於応得焉孰是?蓋倉官月糧一石而駅丞俸金歳七両云。
書き下し
法の立つや、其の必至の情を體し、寬くして自ら生ずるの路あり、而る後に其の分を逾ゆるの私を繩す。則ち上に直色有りて下に心言無し。今や小官の俸は饔飧に供するに足らず。偶たま常例を受けて輒ち貪法を以て之を罷むるは、是れ小官終に設く可からざるなり。體を識る者は其の公を廣めて私を閉ぢんと欲す。而るに當事者は又た其の私を計る。某の常例、某の從來なりと。夫れ其の應に得べき所を寬くして而る後に其の不義の取を罪すると、夫の不義の取有るに因りて遂に應に得べきに儉なるとは孰れか是なる。蓋し倉官の月糧は一石にして、驛丞の俸金は歲に七兩と云ふ。
現代語訳
法が立つときは、必ずそうなる情を我が身に置き、寛やかに自ら生きる道を残し、その後に分を越えた私を縛ります。そうすれば上にまっすぐな顔色があり、下に胸に呑む言葉がありません。今は小役人の俸給が朝夕の食事に足りません。たまたま慣例の付け届けを受けただけで汚職の法で罷免するなら、小役人はそもそも置けません。体を知る者は公を広げて私を閉じようとします。ところが当事者はまたその私を計り、これは慣例だ、これは従来のものだと言います。応当得るべきものを寛やかにしてから不義の取得を罪するのと、不義の取得があるからといって応当得るべきものまで切り詰めるのと、どちらが正しいでしょうか。倉庫の役人の月の糧は一石、駅の長官の俸給は年に七両だといいます。
解説
この章句が説くこと
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『墨子』魯問子墨子、公尚過を越に游ばしむ。公尚過、越王に説く。越王、大いに説び、公尚過に謂いて曰く、「先生、茍くも能く子墨子をして越に於いて寡人を教えしめば、請う、故吳の地、方五百里を裂きて以て子墨子に封ぜん」と。公尚過、許諾す。遂に公尚過の為に車五十乗を束ね、以て子墨子を魯に迎えて曰く、「吾れ夫子の道を以て越王に説く。越王、大いに悦びて過に謂いて曰く、『茍くも能く子墨子をして越に至りて寡人を教えしめば、請う、故吳の地、方五百里を裂きて以て子を封ぜん』と」。子墨子、公尚過に謂いて曰く、「子、越王の志を觀るに何若。意うに越王、将に吾が言を聴き、吾が道を用いんとせば、則ち翟、将に往かんとす。腹を量りて食い、身を度りて衣し、自ら羣臣に比せん。奚んぞ能く封を以て為さんや。抑そも越、吾が言を聴かず、吾が道を用いずして、我れ往かば、則ち是れ我れ義を以て糶るなり。之を糶るに鈞しくんば、亦た中國に於いてするのみ。何ぞ必ずしも越に於いてせんや」と。
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『墨子』七患今、其の子を負いて汲む者有り、其の子を井中に隊とせば、其の母は必ず従いて之を拯わん。今、嵗凶に、民饑え、道に餓うるは、此の疚み、子を隊とすより重し。其れ察する無かる可けんや。故に時年、嵗善ければ、則ち民は仁にして且つ良し。時年、嵗凶なれば、則ち民は吝にして且つ惡し。夫れ民に何の常か之れ有らん。為す者寡く、食らう者衆ければ、則ち嵗に豐なること無し。故に曰く、「財足らざれば則ち之を時に反り、食足らざれば則ち之を用に反る」と。故に先民は時を以て財を生じ、本を固くして財を用う、則ち財足る。故に上世の聖王と雖も、豈に能く五榖をして常に收まらしめて、旱水をして至らざらしめんや。然れども凍餓の民無き者は、何ぞや。其の力むること時に急にして、自ら養うこと儉なればなり。故に夏書に曰く「禹に七年の水あり」、殷書に曰く「湯に五年の旱あり」と。此れ其の凶餓に離るること甚し。然れども民の凍餓せざる者は、何ぞや。其の財を生ずること密にして、其の之を用うること節なればなり。
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