呻吟語 / 外篇・廣喻・道平らかならば人皆な道に由る
齊有南北官道洿下者裡餘,雨多行潦,行者不便則傍西踏人田行,行數日而成路。田家苦之,斷以橫牆,十步一堵,堵數十焉,行者避牆,更西踏田愈廣,數日又成路。田家無計,乃蹲田邊且罵且泣,欲止欲訟,而無如多人何也。或告之曰:「牆之所斷,已成棄地矣。胡不僕牆而使之通,猶得省於牆之更西者乎?」予笑曰:「更有奇法,以築牆之土垫道,則道平矣。道平人皆由道,又不省於道之西者乎?安用牆為?」越數日道成,而道傍無一人跡矣。
新字:斉有南北官道洿下者裡余,雨多行潦,行者不便則傍西踏人田行,行数日而成路。田家苦之,断以横牆,十歩一堵,堵数十焉,行者避牆,更西踏田愈広,数日又成路。田家無計,乃蹲田辺且罵且泣,欲止欲訟,而無如多人何也。或告之曰:「牆之所断,已成棄地矣。胡不僕牆而使之通,猶得省於牆之更西者乎?」予笑曰:「更有奇法,以築牆之土垫道,則道平矣。道平人皆由道,又不省於道之西者乎?安用牆為?」越数日道成,而道傍無一人跡矣。
書き下し
齊に南北の官道の洿下なる者裡餘有り。雨多くして行潦あらば、行者便ならずして則ち西に傍りて人の田を踏みて行く。行くこと數日にして路を成す。田家之を苦しみ、斷つに橫牆を以てす。十步に一堵、堵は數十なり。行者牆を避け、更に西のかた田を踏むこと愈いよ廣し。數日にして又た路を成す。田家計無く、乃ち田邊に蹲り且つ罵り且つ泣く。止めんと欲し訟へんと欲するも、多人を如何ともする無きなり。或るひと之に告げて曰く、「牆の斷つ所は、已に棄地と成れり。胡ぞ牆を僕して之をして通ぜしめざる。猶ほ牆の更に西なる者より省くを得んか」と。予笑ひて曰く、「更に奇法有り。牆を築くの土を以て道に垫がば、則ち道平らかならん。道平らかならば人皆な道に由る。又た道の西なる者より省かざらんや。安んぞ牆を用ふるを為さん」と。越えて數日道成りて、道傍に一人の跡無し。
現代語訳
斉に南北の官道で低くなったところが一里ほどありました。雨が多く水が溜まると、通行人は不便なので西に寄って人の田を踏んで歩きます。数日歩けば道ができます。田の家はこれに苦しみ、横向きの塀で断ちました。十歩に一つの塀で、塀は数十ありました。通行人は塀を避けてさらに西の田を踏み、範囲がいっそう広がりました。数日でまた道ができます。田の家は手が無く、田のそばにうずくまって罵り泣きました。止めたくても訴えたくても、大勢をどうにもできません。ある人が告げて言いました。塀で断ったところはすでに捨て地になっています。塀を倒して通らせればよい。そのほうが塀の西まで踏まれるより省けるでしょう。私は笑って言いました。もっと良い方法があります。塀を築いた土で道を埋めれば道が平らになります。道が平らなら人はみな道を通ります。そのほうが道の西を踏まれるより省けるでしょう。どうして塀が要りますか。数日たって道ができ、道端に一人の足跡もありませんでした。
解説
この章句が説くこと
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