呻吟語 / 外篇・治道・萬事虛文
紀綱法度,整齊嚴密,政教號令,委曲周詳,原是實踐躬行,期於有實用,得實力。今也自貪暴者好法,昏惰者廢法,延及今日萬事虛文,甚者迷製作之本意而不知,遂欲並其文而去之。只今文如學校,武如教場,書聲軍容,非不可觀可聽,將這二途作養人用出來,令人哀傷憤懑欲死。推之萬事,莫不皆然。安用縉紳簪嬰塞破世間哉?
新字:紀綱法度,整斉厳密,政教号令,委曲周詳,原是実践躬行,期於有実用,得実力。今也自貪暴者好法,昏惰者廃法,延及今日万事虚文,甚者迷製作之本意而不知,遂欲並其文而去之。只今文如学校,武如教場,書声軍容,非不可観可聴,将這二途作養人用出来,令人哀傷憤懑欲死。推之万事,莫不皆然。安用縉紳簪嬰塞破世間哉?
書き下し
紀綱法度の整齊嚴密、政教號令の委曲周詳は、原と是れ實踐躬行し、實用有り實力を得るを期す。今や貪暴なる者は法を好み、昏惰なる者は法を廢し、延きて今日に及びて萬事虛文たり。甚だしき者は製作の本意に迷ひて知らず、遂に其の文を並せて之を去らんと欲す。只今文は學校の如く、武は教場の如し。書聲軍容は、觀る可く聽く可からざるに非ず。將に這の二途の作養する人を用ひ出だし來たらば、人をして哀傷憤懣して死せんと欲せしむ。之を萬事に推すに、皆な然らざるは莫し。安んぞ縉紳簪嬰を用ひて世間を塞破せんや。
現代語訳
綱紀と法度が整い厳密なこと、政教と号令が行き届き詳しいことは、もともと実際に踏み行い、実用があり実力を得ることを期したものです。今は貪り暴れる者が法を好み、暗く怠る者が法を廃し、今日に及んで万事が空文となりました。ひどい者は作った本来の意図が分からなくなり、ついにその文まで一緒に取り去ろうとします。今の文は学校のようであり、武は教練場のようです。書を読む声も軍の装いも、見るに堪えず聴くに堪えないわけではありません。この二つの道が育てた人を使ってみれば、悲しみ憤って死にたくなります。これを万事に押し広げれば、そうでないものはありません。どうして官服や冠の者で世間を塞ぐ必要があるでしょうか。
解説
この章句が説くこと
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『学問のすゝめ』十六編・心事と働きと相当すべきの論・功に食ましめて志に食ましめず言行齟齬するとは、議論に言うところと実地に行なうところと一様ならずということなり。「功に食ましめて志に食ましめず」とは、「実地の仕事次第によりてこそ物をも与うべけれ、その心になんと思うとも形もなき人の心事をば賞すべからず」との義なり。また俗間に、「某の説はともかくも、元来働きのなき人物なり」とてこれを軽蔑することあり。いずれも議論と実業と相当せざるを咎めたるものならん。
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『墨子』尚同中曰く、其の正長為ること此くの若し。是の故に出でて誅して勝つ者は、何の故を以てするや。曰く、唯だ尚同を以て政を為す者なり。故に古者、聖王の政を為すこと此くの若し。今、天下の人曰く、「方今の時、天鬼の福、得可きなり。萬民の便利する所にして能く彊めて焉に從事すれば、則ち萬民の親、得可きなり。其の政を為すこと此くの若し。是を以て事を謀り事を舉ぐれば成り、入りて守れば固し。上なる者は天鬼、其の政長為るに厚きこと有り、下なる者は萬民、其の政長為るに便利なること有り」と。天鬼の深く厚くする所にして、彊めて焉に從事すれば、則ち天下の正長、猶お未だ天下に廢せられざるなり。而るに天下の亂るる所以の者は、何の故を以てするや。
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