呻吟語 / 外篇・廣喻・物は各おの宜しき用有り
僮曰:「留以為棟。」余曰:「木大不宜也。」僮笑曰:「木一也,忽病其大,又病其小。」余曰:「小子聽之,物各有宜用也,言各有攸當也,豈惟木哉?」他日為餘生炭滿爐烘人。余曰:「太多矣。」乃盡溫之,留星星三二點,欲明欲滅。余曰:「太少矣。」僮怨曰:「火一也,既嫌其多,又嫌其少。」余曰:「小子聽之,情各有所適也,事各有所量也,豈惟火哉?」
新字:僮曰:「留以為棟。」余曰:「木大不宜也。」僮笑曰:「木一也,忽病其大,又病其小。」余曰:「小子聴之,物各有宜用也,言各有攸当也,豈惟木哉?」他日為余生炭満炉烘人。余曰:「太多矣。」乃尽温之,留星星三二点,欲明欲滅。余曰:「太少矣。」僮怨曰:「火一也,既嫌其多,又嫌其少。」余曰:「小子聴之,情各有所適也,事各有所量也,豈惟火哉?」
書き下し
僮曰く、「留めて以て棟と為さん」と。余曰く、「木大にして宜しからざるなり」と。僮笑ひて曰く、「木は一なり。忽ち其の大を病み、又た其の小を病む」と。余曰く、「小子之を聽け。物は各おの宜しき用有り、言は各おの攸當有り。豈に惟だ木のみならんや」と。他日余の為に炭を生じ爐に滿ちて人を烘る。余曰く、「太だ多し」と。乃ち盡く之を溫め、星星たる三二點を留め、明らかならんと欲し滅せんと欲す。余曰く、「太だ少なし」と。僮怨みて曰く、「火は一なり。既に其の多きを嫌ひ、又た其の少なきを嫌ふ」と。余曰く、「小子之を聽け。情は各おの適する所有り、事は各おの量る所有り。豈に惟だ火のみならんや」と。
現代語訳
下働きの子が言いました。取っておいて棟にしましょう。私は言いました。木が大きくて合わない。子は笑って言いました。木は一つなのに、急に大きいと言い、また小さいと言う。私は言いました。よく聞きなさい。物にはそれぞれ合う用があり、言葉にはそれぞれ当たる場所がある。木だけのことではない。後日、私のために炭を起こして炉一杯にし、人を焼くほどでした。私は言いました。多すぎる。そこで全部かき消して、ちらほら二つ三つだけ残し、点くか消えるかという具合でした。私は言いました。少なすぎる。子は怨んで言いました。火は一つなのに、多いと嫌い、また少ないと嫌う。私は言いました。よく聞きなさい。情にはそれぞれ適するところがあり、事にはそれぞれ量るところがある。火だけのことではない。
解説

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