呻吟語 / 内篇・修身・世に十態有り
世有十態,君子免焉:無武人之態(粗豪),無婦人之態(柔懦),無兒女之態(嬌稚),無市井之態(貪鄙),無俗子之態(庸陋);無蕩子之態(儇佻),無伶優之態(滑稽);無閭閻之態(村野),無堂下人之態(局迫),無婢子之態:(卑諂),無偵諜之態(詭暗),無商賈之態(衒售)。
新字:世有十態,君子免焉:無武人之態(粗豪),無婦人之態(柔懦),無児女之態(嬌稚),無市井之態(貪鄙),無俗子之態(庸陋);無蕩子之態(儇佻),無伶優之態(滑稽);無閭閻之態(村野),無堂下人之態(局迫),無婢子之態:(卑諂),無偵諜之態(詭暗),無商賈之態(衒售)。
書き下し
世に十態有り、君子は焉を免る。武人の態(粗豪)無く、婦人の態(柔懦)無く、兒女の態(嬌稚)無く、市井の態(貪鄙)無く、俗子の態(庸陋)無く、蕩子の態(儇佻)無く、伶優の態(滑稽)無く、閭閻の態(村野)無く、堂下人の態(局迫)無く、婢子の態(卑諂)無く、偵諜の態(詭暗)無く、商賈の態(衒售)無し。
現代語訳
世の中には十の態があり、君子はそれを免れます。武人の態は粗く荒々しい、婦人の態は柔らかく気弱、児女の態は甘え幼い、市井の態は貪って卑しい、俗子の態は凡庸で狭い、蕩子の態は軽薄、伶優の態はふざけ、閭閻の態は野暮、堂下人の態は縮こまり、婢子の態はへつらい、偵諜の態は隠れて欺き、商賈の態は売り込みです。
解説
避けるべき振る舞いを列挙し、それぞれに二字の説明を添えた一覧です。身分や職業の名を借りていますが、批判しているのは職業ではなく態、つまり身についた振る舞いの型です。縮こまり、へつらい、売り込み。どれも今の職場にもそのまま見つかります。当時の身分観の色が濃い一段ですが、型を名指しする道具としては今も使えます。
この章句が説くこと
態度型振る舞い一覧自省
関連する章句
-
葉隠・聞書第一手跡(しゅせき)の行儀正しく、疎略(そりゃく)なきより上はあるまじけれども、その分にては、堅(かた)くれ賤(いや)しく見ゆるなり。この上に、格(かく)を離(はな)れたる姿あるべし。諸事(しょじ)にこの理(ことわり)あるべし。
-
『呻吟語』内篇・應務・仇人の辭色と恩人の狀態禍は人を仇とせずして仇人の辭色有るより大なるは莫し。恥は人に恩あらずして恩人の狀態を詐るより大なるは莫し。
-
『呻吟語』内篇・應務・養態は士大夫の陋習態を養ふは、士大夫の陋習なり。古の君子は德を養ふ。德成りて外に見はるる者に德容有り。怒る可きを見れば、則ち剛正の德容有り。行ふ可きを見れば、則ち果毅の德容有り。
-
『呻吟語』内篇・修身・辭色は卻って是れ我の的なり余は小人を待つに辭色を假す能はず。小人或いは堪ふる能はず。年友王道源之を危ぶみて曰く、「今世官に居るには切に宜しく此を戒むべし。法度は是れ朝廷の的なり、財貨は是れ百姓の的なり、真に人情を借り得ず。辭色に至りては、卻って是れ我の的なり。些兒を假借するも何ぞ害あらん」と。余深く之に感じ、因りて識して改めたり。
-
孟子・告子章句上孟子曰く、「羿(ゲイ)の人に射を教うるには、必ず彀(コウ)に志す。學者も亦た必ず彀に志す。大匠の人に誨うるには、必ず規矩を以てす。學者も亦た必ず規矩を以てす。」
-
『呻吟語』内篇・修身・俗氣膏肓に入る俗氣膏肓に入らば、扁鵲も治す能はず。人と為り胸中に分毫の道理無くして、庸調卑職、虛文濫套を之を認むること極めて真にして、之を執ること甚だ定まる。是の人や、將に救藥せんと欲するも、入る可からざるを知る。吾が黨之を戒めよ。